episode79 ページ32
弾かれた額を抑えて呆然としていると、はぁと溜息を吐いたズールは床に散乱している金属部品を片付け始め、私もしゃがんでそれを手伝う。
ｽﾞ「……あいつの親父さんって俺の師匠だったんだ」
「船大工の？」
ｽﾞ「そ、革命が起こる前……まあそれはそれは治安が糞ほど悪い時に俺らを守ってくれた人で、そんな師匠のことがみんな大好きだったんだ」
懐かしむような、そんな柔らかい笑みを顔に浮かべて静かに話を続ける。
ｽﾞ「師匠の奥さんは流行病でミカエルが小さい時に亡くなっちまって、男手ひとつで育ててたんだ。俺らのいい師匠で、ミカエルのいい親父だった。貧しいけど毎日みんなで馬鹿騒ぎしてさ」
「いい人だったんだね」
ｽﾞ「ああ、いい人だった。だけど死んじまった……いや殺されちまった。昼になっても造船所に顔を出さなくて、様子を見に行ったら呆然としてるミカエルと血塗れの親父さんがいて、」
どき、と心臓が鳴る。
一瞬脳裏に過った暗闇を振り払うように首を振ると顔を伏せるズールが目に入る。
何とでもないような表情をしているが、彼がキツく握りしめる拳からタラりと一筋の赤が垂れ床にシミを作った。
ｽﾞ「ずっと飯も食わねぇ水も飲まねぇ、そんなアイツに無理くり飯を食わせて語りかけて。親父が残した宝を失いたくなかった。革命が起きて幹部の人たちと出会って、そしてやっと普通に生活ができるまでに落ち着いたんだが、やけに俺に心酔するようになっちまって」
「……………」
なるほど……な。大事な人を失って一人になって、ポッカリ空いた心にずっと寄り添ってくれたのがズールなんだろう。
ミカエルの中でいうズールは、私でいうトントンやタミーラと同じなんだろうな。
「そりゃ……嬉しくなんかないよな、」
ふ、と自虐気味に笑いズールの掌から零れる血液を自身のハンカチで隠すように覆う。
ｽﾞ「あ、すまん血……」
「別にそこまでじゃないから気にしないで」
あの時診療所で自身から零れる血に震える私を目にしていたズールは申し訳なさそうな声を出した。
「……ね、ズール。私、ミカエルとちゃんと話したい。ちゃんと彼の話が聞きたい」
ｽﾞ「！……そうだな」
金属部品や破片を広い終わり、私たちは立ち上がる。
ｽﾞ「ま、兎にも角にも試作品が仕上がってからだな。そうすればたっぷり時間が取れるだろ」
「そうだね、頑張ろうねズール」
ｽﾞ「おう！」
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蛇狐(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» ありがとうございます！自分のペースで頑張っていきます！ (2020年12月11日 16時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
#ゆー@金欠民族 - 後編決定おめでとうございます！！ばちくそにおもろいです！！ ゆっくり、ゆっくりでいいんで続き待ってます！！ これからも頑張ってください！！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: 3046ae6781 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 妖々 梅雨里さん» 仕事の都合上、更新するペースはまちまちになってしまうと思いますが、頑張ります！ (2020年9月12日 21時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
妖々 梅雨里 - 更新ゆっくりと頑張ってくださいね〜無理をしたらちょっと……ね〜。 (2020年9月12日 12時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - アズライト@pitterさん» ありがとうございます！これからもビシバシと物語を進めていきます！ (2020年8月20日 0時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年8月19日 8時
