episode7 ページ7
「痛そうやな」
ひとしきり笑った彼はそうぽつりと呟いた。大方、顔にできている痣のことだろう。
突然身に覚えのない罪を言い渡され、その場で取り押さえられた私は「やってない」と首を振って抵抗したため、少し……いや、だいぶ強く何度も殴られた。
未だにヒリヒリと痛むこの傷をタミーラが見る度に顔を顰めるのだから、よっぽど酷いのだろう。
同情するような、そんな目を向ける青年の視線に耐えられなかった私は逃げるように床へ視線を落とした。
妬み。嫉妬。憎しみ。
そんな汚らしい目ばかりを見てきた為か、優しい目を向けられることに慣れていない私はどういう反応をすればいいのか分からなかった。
お互い黙り、シン、と静かになった居心地の悪い空間に耐えられず、身動ぎをするとジャラジャラと鎖がなってしまい耳が痛い。
にしても、一体この新兵はいつまでいるのだろうか…早く出ていってくれ。
そう心の中で思っていると、突然ぬるりと頬に何かを塗られ、思わず小さく悲鳴をあげてしまった。
ツン、と鼻にスースーする薬品の匂いがした。薬を塗っているのだろうか……
撫でられる度に頬をふにふにと押されて鈍い痛みに顔を顰める。
「すまんなぁ、痛いけどちょっと我慢してなぁ。俺の知り合いの医者が作った軟膏なんやけど、すんごい効くからこれで少しは良くなる筈やで」
「なんで……」
「いやぁ、俺な、アンタが罪人だなんて思えんわ。こんないい目をしとる奴が罪人なわけあらへん」
「いい……目…？」
私がそう聞き返すと青年は少し手を止めて、じっとこちらを見る。
分からない。
この青年が、分からない。
「強い信念をしっかりと持っとる、綺麗な目やで」
何でも知ってる。そう言いたげに、全てを見透かすような彼の橙色に輝く瞳に魅入られた私は、顔を逸らすことが出来なかった。
終わったで、と言って頬から手を離すと、青年は立ち上がりパンパンと尻についた埃を払う。
「そろそろ戻らんと、上が騒ぎそうやな。んじゃ、また会おなAさん」
ぽんぽん、と私の肩を叩いて青年は背を向けた。段々と小さくなる彼の背中を見送り、私はツンと漂う薬品の香りに包まれながらその場に寝転んだ。
久々にタミーラ以外から触れた人の優しさ。
その青年の優しさが、いつだかの赤眼の彼を彷彿させ、無性に泣きたくなった。
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蛇狐(プロフ) - イチゴダイスキさん» へへへ、ありがとうございます！(神様では)ないです。 (2020年12月13日 15時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴダイスキ - え？え？え？神様ですか？そうですね？なんでこんな神作品作れるですか！！もう無理好キィ(鼻血) (2020年12月12日 20時) (レス) id: f02fd4c99a (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - ゼネヴァンスさん» ありがとうございます！これからも隻脚をどうぞ宜しくお願いします！v (2020年8月10日 1時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
ゼネヴァンス(プロフ) - お気に入り1000人以上になりましたね！！！おめでとうございますっ！！！！ (2020年8月10日 0時) (レス) id: d6da2f5e2e (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 紗稀さん» ひぇ……とてもありがたいお言葉ありがとうございます！読者さんや相互さんのお陰で成り立ってるようなものなので……笑 頑張って更新していきます！v (2020年8月9日 23時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年7月29日 17時
