【d!】隻脚の書記長【tn】

episode11 ページ11

高そうな大きな車の前に着くとグルッペン総統に顔をむにっと掴まれた。驚き目を丸くして彼を見ると「口を開けろ」と言われた。

突然の事で思わず固まっているとオスマン外交官がグルッペン総統の頭をスパーンと叩いた。

すごく痛そう。

オスマン外交官はそのまま私を守るように抱きしめ頭を抑えて地面に踞るグルッペン総統へ唾を吐いた。

仮にも自国の総統にそんなことして大丈夫なのだろうか…

そんな疑問を抱いて彼の顔を見ると目を薄らと開けてグルッペン総統を睨みつけていた。




os「アホちゃうか？女の子にそんな乱暴なんてほんまに野蛮めう〜」

gr「ぃッで〜！お前だからって殴ることないやろが、めう〜やないねん！！お前の方がアホやろアホ！」

os「Aちゃんアイツ怖いめぅ〜」

「え…」




先程の威厳ある二人はどこえやら。なんともまぁ幼稚な喧嘩を目の前で繰り広げられ思わず目をしばしばさせた。

車の前で待機してる従者さんたちは肩をプルプルさせて笑いを堪えている。

ちょっと笑いこらえてないでコレどうにかしてください。



gr「おらA、お前口開けて早く鍵出せや！それ外せんやろ！」

「へ、はいっ！…あ」



突然の事にビックリした私は思わず素で返事をしてポロリとそのまま鍵を口から落としてしまった。

グルッペン総統はそんな私を見て少し笑ったあと、涎で鈍く光る鍵をなんの躊躇いもなしに拾い上げた。そしてそのまま私に回っているオスマン外交官の手を払い除けて私の手錠を解いた。


ずっと付けられていたためか赤黒く腫れてしまった手首を擦りながら周囲を見回す。

たしかここを真っ直ぐ走れば森に抜ける。

上手く走れるか、逃げれるか分からないが一か八か。

幸いな事にグルッペン総統閣下とオスマン外交官は未だに言い争いを続けていて私に意識を向けていない。




逃げるなら…今しかない。









「逃げようなんて思わないで下さいねA上官」

「ッ！？」



耳元で聞こえた声に思わずバッと後ろを振り返る。気づかなかった。全然気配なんてしなかった。


そんなことより、なんでここにいる？


あの日とは違うラフな格好の青年を睨みつけると「相変わらず怖いお方や」と馬鹿にするように頭を撫でられた。



gr「お、チーノ」

os「チーノ潜入おつかれさん。大活躍やな」

ci「んふふ、お二人さ〜んそんな煽ててもなんも出やしませんよ」




親しげに話す三人を見て私は眉を顰めた。

この青年は…一体何者なんだ？

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