Dr.ロレイスの提言４４ ページ46
11月16日 11:43
管理者:Dr.ロレイス
サイトC:フロアF/S-324.29
サイトBで行っている実験はウロボロスに対して順調に負荷をかけ続けている。あくまでも彼らの研究対象はあの外包地で戦うロボットであり、ウロボロスを狙ったものではない。しかし低セキュリティ環境下、様々な人がアクセスしたとなれば、どこかしらでウロボロスにも読み込まれるものだ。ウロボロスはシステム上、セキュリティ設定されている場所に顔を出す。顔を出し、読み込み、指定されたセキュリティを最適な形で処理する。順位を付け、何かあった時に保護する優先度を指定する。
サイトBの彼らは、様々な人から寄せられた個人体験をロボットに読み込ませ、最適な解説と解決法を探させている。結果は散々なものだ。動作を停止したのが五体、バグ三体、データ破損が六体だったかな。別にこれらからデータ収集できているから実験自体に問題はない。壊れる前提で行っている。本命は、巻き添えに誘い出したシステムウロボロスだ。
人格融合とは、人が自然に受入れながら適応している〈他者からの影響〉による現象だ。好みや性格の変化は年齢などによって自然に起こるが、それ以外にもきっかけがある。憧れの人がこうしていたから、恩師がこう教えてくれたから、流行りのアイドルが、友達が…とか、他者の性格や好み、行動に影響されて人格を模倣し、また反面教師として…あぁはなるまい、と眉を顰めたりな。これは結果的に自分の人格となるが、無自覚の中で他人の人格を参考にし、自らの中に取り込んでいる。人格の全てではなく、その一部を、自分なりにリメイクして取り込んでいる。このリメイク作業を人間は無意識に行っている。
しかしシステムと言うのは、これができない。あらかじめ埋め込まれているプログラム、それを稼働させるシステム。母数を総当たりして高確率の、言い替えれば〈最も当たり判定の広い〉明確な答えを示す。母数が少なければ、不可解な答えを出してしまう。
あの人はあの状況で、あの性格だからこう動いた。でも私はこの状況でこの性格だからこう動く…と、個人視点の世界をウロボロスは知らない。だからその例を膨大に用意してやった。募集したサンプルの中には、負の感情について殴り書かれた物もある。恋人に対しての物だったかな。しかし最後にはそれでも大切だと、同じ口で呟くのが人間だ。
否定し、肯定し、しかし否定する。
ウロボロスがキャパオーバーするのはいつだろうね？
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