Dr.ロレイスの提言 (ページ26)

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Dr.ロレイスの提言２４ページ26

8月14日 8:45
管理者:Dr.ロレイス
サイトC:フロアF/S-324.6

あと一歩なんだ。
私達は沈丁花のサンプルから発生した、人のような人工生命を〈TD-1〉と名付けた。タイプダフネ一型だ。名付けたのはいいんだが、あと一歩のところで問題が発生している。

培養装置に移された個体の内、順調に人の形へと育っているのは十三体。その中で成長速度や身体強度をクリアしているのは九体。そして、人間の赤子に似た反応を示す完成形に最も近い個体が五体だ。この五体を主軸とし、さらにサンプルを採取してクローンを増やす予定でいる。細胞一つから赤子の大きさにまで育つのに約二週間。目標である〈都市内部警備兵〉として活動させるには、大人に近い大きさにまで育てる必要がある。予測では二十日前後だ。

問題と言うのは、この完成形に最も近い五体全て、人間に近い構造や身体機能を持っていながら、また異なる性質も持っている点だ。

本当はな、五体ではなく六体いた。

ええと…私達の体は怪我をすると血が流れる。治癒能力もある。痛みもな。それらがTD達にあるのかどうか、またあった場合正常に機能するかどうかをテストしたんだ。彼らの治癒能力は人よりも遥かに高かった。恐らく植物としての生命力に起因しているのだろう。その一体の腕を少し切り、経過を観察させてもらって、人に比べて四倍ほどの速度で傷が治ったんだ。それで…言い訳になってしまうんだが、TD達は可愛がられるために生まれるわけではない。都市を守り、時に戦闘を担うことも想定されている。外包地にいるロボット達が侵略者の海賊と交戦するように、TD達は都市内部にいる…例えば強盗とか、立てこもりとか、ちょっと治安の悪い場所への応援とか…警察への協力とか、そう言う利用を想定されている。つまり、限界を知っておく必要があるんだ。ロボットなら回路が焼き切れればお手上げとか、衝撃や環境に対する耐性とか。

TD達の限界は人間に近い。致命傷が限界だ。薬品耐性は優れていたし、骨格も人間より数倍強靭だった。しかし心臓を突かれると限界を迎える。限界を迎えた個体は倒れ、塵となって消滅する。それで…仮に都市で戦闘行為が発生し、TD達が倒れたとしよう。彼らは塵となる。死体は残らない。この点は…言葉が悪いが、後片付けが楽だ。人々は死体を見ない。危険な現場にTD達を送り込んだとしても、何も残らない。

塵しか残らない。