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ミヒャエルはといえば、こんな時にこそ「育ちの違い」を思い知らされて。彼には心配してくれる親なんていない。それがきっと自業自得なことは分かっているから、口になんて出さない。でも、だからこそ、澪が心配してくれるのが嬉しくて。空のコップを持ったまま、食材を切ったり卵を溶いたりする澪を眺めていると、コンロに火をつける音と同時にちらりと目が合う。
「あ。……あんま見てないでよ、なんか……、恥ずかしい」
「俺も料理憶えようかなあっテ」
「憶えて、ちゃんと作るの? それ」
「アハハ。めんどくさいから作んないかモ」
トン、とコップを置く音が、食材を炒める音に混ざって消える。
「やっぱ見てても分かんないヤ」
そういうと、ミヒャエルはソファに勢い良く倒れ込んでスマホを見始めた。
「ソファ壊れるよ」
「もう壊したことあるヨ〜。でも好きなんだもン、ソファに倒れ込むノ」
「今度さあ、なんか一緒に作ろうよ。そしたら料理憶えられるでしょ」
「エ〜、俺あんまご飯食べないシ。今日も澪来なかったらいちご食べようかなって思ってタ」
「僕が毎食作ったら毎食食べるんだ?」
口に出してから、変なことを言ったかもしれないと少し恥ずかしくなる。しかしミヒャエルが気にしない様子で
「アハハ! 食べる食べル。でも食べ過ぎると吐くんだよね俺。それはもったいないからやだナ」
と笑うのも、ちっとも笑い事じゃなくて心配になる。あれこれくだらないことを話している内に、出来上がったケチャップライスを、澪は戸棚から皿を取り出し手際よく盛り付けた。そこに焼いた卵を載せて、オムライスの出来上がり。
「エ、すごイ! お店みたいじゃなイ?」
「これでお店は無理だって。普通普通」
「澪の普通のハードル高すぎるんだもン」
ミヒャエルの仕事はその皿を机に運ぶくらいしかない。料理を前にして向き合って座っていると、なんだかふわつくような変な気持ちがする。
「テレビ見ながらご飯食べたら怒るタイプ?」
「別にどっちでもいいけど。ミヒャだし」
「何ソレ〜?」
そう言うと、普段は絶対にやっていないのだろう、ミヒャエルは少しわざとらしいくらいにぴったりと手を合わせる。それを見てくすりと笑うと、澪も手を合わせた。声をだす前から、言葉が重なりそうなことが分かった。
「いただきます」
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和癒 - ここりどらすさん» 遅くなってしまい、申し訳ないです!!更新いたしました!本当に申し訳ございませんでした! (2022年9月20日 13時) (レス) id: c16c5fa71a (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - アルフさん» ワ、ありがとうございます! 和癒さんの澪くんは【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/2nayu2/】、うちのミヒャエルは【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/kokoridora6/】にCSがあります…! (2022年8月3日 7時) (レス) id: 29de6c45fc (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 和癒さん» 全然!! 私も最近学校の部誌作るのでてんやわんやしてて… 来週までには落ち着くのでそしたらまた書きます! (2022年8月3日 7時) (レス) id: 29de6c45fc (このIDを非表示/違反報告)
アルフ - すみません、、とても面白かったのですが、出演しているキャラクターの設定などはありますか?いきなり質問すみません! (2022年8月2日 10時) (レス) @page21 id: c16c5fa71a (このIDを非表示/違反報告)
和癒 - ここりどらすさん» 遅くなってしまい、申し訳ないです!! (2022年8月2日 8時) (レス) id: f702b299fb (このIDを非表示/違反報告)
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