卒業する子 #sgi ページ27
桜はまだ咲かない3月中旬。私は大学を卒業する。
3月いっぱいはまだ学生だし、大学なんてもう1月末から行ってないのだが、やはり卒業式は寂しく感じるものだ。
4年間通い続けた学校も今日で最後。
「A先輩!卒業おめでとうございます!」
サークルで面倒を見てきた後輩たちに誘われてカフェテリアの方へ向かうと、サークルの同期や後輩が集まっていた。
「卒業おめでとう」
「今までありがとう」
「これからもよろしくね」
口々に言葉を交わして、写真を撮って、泣き出しちゃう子なんかもいたりして。
大学に入ったらこんな青春、と思ってたが、案外4年間学生最後の青春を謳歌できたと思う。
後輩と同期の写真を撮ってくれと頼まれ、自分のスマホを取り出してカメラを起動させる。
バッチリ撮れたよ、と親指を立てたところで電話がかかってきた。
「もしもし?」
『A、校門までおいで』
「え?」
『早く』
それだけで切れてしまった電話。
仲間に断って校門へ向かうと、卒業生から頭ひとつ抜けたスーツの後ろ姿。
「駿貴さん。どうして」
「A、はい」
黒のスーツに、大きすぎない、でも十分に映える花束。
私が花束もらうのが夢っていつかこぼしてたこと、覚えててくれたんだ。
「でも今日は仕事があるから来られないって…」
「有給取ってきた。卒業おめでとう、A。」
「ありがとう」
「袴、似合ってる」
親にも、友達にも、先生にも言われたけど、やっぱり一番言われて嬉しいのは彼からだ。
「ありがとう。駿貴さんもわざわざスーツ着てきてくれたんだね」
「大事な恋人の大事な日なので」
4年間の集大成の日に、大好きな彼からのサプライズ。
嬉しくて、幸せで、なんて言葉にしたら良いかわからない。
ありがとう、ありがとう、とただ繰り返す私。
「女子大って初めてきたけど、やっぱ男は浮くな」
「そうだね、いつもは男の人ほとんどいないから、今日は特別って感じ」
他の卒業生の彼もちらほら見られるが、やっぱり駿貴さんが一番かっこいい。
「駿貴さんかっこいいね」
「ん?どうした」
「私の彼氏、かっこいいなーって」
「俺の彼女も最強に可愛いけど?」
側から見たらとんだバカップルに見えるだろうか。
スーツ姿の駿貴さんに、花束に、卒業式という日、そんなの最強以外の何物でもない。
卒業おめでとう、私。
それから、駿貴さんという最強な彼氏を手に入れた私、よくやった。
これからも彼の隣で笑って過ごせる日がずっと続きますように。
卒業される皆さん、おめでとうございます。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時