嬉しい子 #ymmt ページ26
「あれ、Aじゃん」
「
彼とのデート中、どうしても買いたい本があるからと言われデパートの本屋に寄った。
私は特に目に留まったものがなかったので、外で待ってるね、と先に店の外に出た。
彼が戻ってくるのを待っているとかつてのクラスメートに話しかけられた。
「久しぶりじゃん、元気?」
「元気だよ、遥希は?」
「元気元気」
先日、高校時代の仲良しグループで集まる話がなかなか予定が合わず流れてしまったので、会うのはだいぶ久しぶりだ。
「またご飯計画しなきゃだよね」
「普通にサシでも行きたいよね」
「確かに!全然あり」
「A」
いつにしよっか、とスマホを取り出して予定を確認しようとすると、後ろから名前を呼ばれた。
「祥彰くん」
「ん?彼氏?」
遥希は相変わらずこういう話が好きらしい。そうだよと答えると、ニヤニヤしながら私の方を見てくる。
「じゃ、邪魔者は消えますわ。また連絡するね」
「うん、またね」
彼の方に向き直ると、その手には本が数冊入っているだろう袋。
「お友達?」
「うん、高校の時の」
「ふーん」
なんの本買ったの?と訊くより早く、彼が口を開いた。どことなく不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか。
しかし、歩き出しても何も話さないし、いつもは自然に繋いでくれる手も差し出してすらくれない。
「どうしたの?」
「え?」
「機嫌悪い?」
回りくどいことは苦手なので、こういう時はストレートに聞くのが得策だ。
「何かあったなら言って」
手首を掴んで真っ直ぐ目を見た。祥彰くんが私の視線から逃げられないのを知っている。
「あの子、かっこいい子だね。背も高くて」
「ん?そうだね…?」
「僕、身長高くないしさ。Aは身長が高い彼氏の方が良かった?」
もしかして。
「もしかして祥彰くん遥希のこと男だと思ってる?」
「え?」
「遥希は確かに見た目かっこいいし身長も高いけど女の子だからね。私、恋愛対象は男の子なんだよね。」
そう言うと黙り込む彼。みるみるうちに耳が赤くなっていく。
「僕、今すごい恥ずかしくない?」
恥ずかしい、と言うが、こちらとしては普段あまり妬かない祥彰くんが女の子相手に嫉妬心丸出しのところを見ることができて嬉しい限りだ。と、本人に伝えたらそれこそ不機嫌になってしまうだろうか。
「私が好きなのは祥彰くんだけだよ。心配しないで」
いまだに目を合わせてくれない彼の手を掴むと、彼は小さくごめん、と呟いた。
こんな彼の姿は珍しいのでむしろ得した気分だ。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時