素直になれない子 #kwmr ページ2
「河村」
「なんだい」
「これあげる」
唐突に渡されたのは綺麗にラッピングされたピンク色の箱。
おや、今日が当日だったか。カレンダーを見る。
この日が近づくと町中ピンクに染まり、ハートやらキラキラやらのデコレーションがなされる。
聖バレンタインデー。ウァレンティヌスが処刑された日。
「たまにはあげてもいいかなって思ったんだよね」
ん、と僕の前にその箱を差し出してくる彼女。
僕はありがたくそれを受け取る。
「開けていい?」
「どうぞ」
箱を開けると可愛らしいトリュフが数個。
箱の中まで丁寧なラッピングがされている。
「手作り?」
「まあね」
Aが作ってくれたことだけで嬉しいし、さらにこんなに時間をかけて丁寧にラッピングしてくれたことも嬉しかった。
「ありがとう。嬉しい」
「ん」
照れ屋な彼女はどういたしまして、とは言わずに一音で返事をした。
「僕の彼女はできた彼女だ」
「何それ。」
「できた彼女ついでに、名前で呼んでみない?」
Aは僕のことをずっと「河村」と呼ぶ。
いつか名前で呼んでくれるかと伺っていたがその気配がないので思い切って聞いてみる。
「…なんで」
「なんでって、そっちの方が嬉しいから」
そう言うとAは僕の喜ぶことをしたいという気持ちと、照れとの葛藤で頭を抱えてしまったようだ。
「たった3文字だよ」
わざと彼女の手を取って、さんはい、というと彼女は観念したように俯いた。
「…た、くや……」
初めてじゃないけれど久々に彼女の口から出たその名前に心が温まったような気がした。
「うん、A」
「もう!」
そう言って僕の胸に顔を埋める彼女。
「Aは可愛いね」
「うるさい」
素敵なバレンタインデーになりそうです。
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作者名:シロ | 作成日時:2020年11月11日 13時