第一幕「道化師たちのオークション」 ページ2
隻腕の魔女───メルヴェ・フェリドールは、退屈そうに頬杖をついた。
『クラウンの奴め……つまらんことで呼び出しおって』
カツカツと爪の先で仮面を叩く。
闇オークションの主催者である道化師のクラウンに呼び出され、バルコニーに設けられた特等席に座らされて、観客として舞台を眺めているこの状況が、この上なく気に食わないらしい。
舞台の上で声を張る道化師を横目で睨み、魔女は何度も欠伸を噛み殺していた。
《それでは一旦小休止を挟みます。お手洗い等は会場を出て右手です。再開は20分後となりますので、遅れないようご注意くださいませ〜》
案内の声に、やっと休憩かと身体を伸ばす。
サイドテーブルに置かれたワイングラスを手に取ると、その背後から場違いなほどに明るい声が飛んできた。
「ヤァ、隻腕の魔女。今宵のショーは楽しんでいるかい？」
『……クラウン』
げ、と仮面の奥の顔を顰める魔女に、クラウンと呼ばれた道化師は帽子をとって大仰にお辞儀をする。
『つまらないよ、正直ね……私が興味を唆られた品は１つもない。常々思うが、相変わらず君は趣味が悪いな』
「酷いなあ、全く。……ま、そんな君も好きだけど」
『気色が悪い』
「ハハハ……ねぇ、流石に傷付くよ？」
仮面の上から涙を拭う仕草をする道化師に、魔女は溜息を吐いて顔を背けた。
『用がないならさっさと帰ってくれ……というか私もう帰っていいか？』
「駄目に決まってるじゃないか、何がそんなに嫌なのさ？」
道化師の問いに、魔女は即答する。
『まず君に誘われたという事実、それから人混み、この格好。そもそも私は闇オークションそのものが嫌いだし、こちらの予定を無視して招待状を押し付けてくるどこかの道化師はもっと嫌いだ』
「オヤ、それは失礼なことをしてしまったなァ。ごめんね、許しておくれ」
『誠意がない。やり直し』
「これはこれは、手厳しいネェ」
悲しげな口調とは裏腹に、道化師はカラカラと声をあげて笑った。
『あぁ、君の顔を見ていたら気分が悪くなってきた。帰っていいか？』
「本当に酷いなぁ君は……僕の顔はそんなに醜くはないはずだけれど」
『美醜の問題じゃあないんだよ』
魔女はそう言うと、ワインを１杯ぐいと呷り、黒い手袋の甲で口元を拭った。薄い菫色の口紅が擦れて掠れる。
静かにグラスを置いて立ち上がり、ローブの裾を整える魔女の前に、道化師はわざとらしく慌てた様子で立ち塞がった。
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シディア - わぁ！！！いなくなってた間にまた面白そうな作品が！！！他の作品も含めて続き楽しみにしています！ (2022年1月10日 14時) (
レス) id: 939d5c7779 (このIDを非表示/違反報告)
よなが(プロフ) - 暇なふぁいるさん» 気に入っていただけたようで嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年11月23日 13時) (レス) @page7 id: 58d4b2eb6a (このIDを非表示/違反報告)
暇なふぁいる(プロフ) - クラウンめっちゃ好みのキャラです！これからも読ませていただきます (2021年11月23日 12時) (レス) @page6 id: 115c38c07a (このIDを非表示/違反報告)
よなが(プロフ) - 暇なふぁいるさん» フラグ付いてるの今気付きました！外したと思ってたんですけど……すみません！ご忠告くださった皆様、ありがとうございます！申し訳ありませんでした！！！ (2021年11月23日 10時) (レス) id: 58d4b2eb6a (このIDを非表示/違反報告)
暇なふぁいる(プロフ) - フラグついてますよ！！ (2021年11月23日 9時) (レス) @page5 id: 115c38c07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よなが | 作成日時：2021年11月22日 3時
