何度でも (ページ19)

今日:1 hit、昨日:18 hit、合計:21,946 hit

19 ページ19

スキャバースはピーター・ペティグリュー、という話はどうやら本当だったらしい。
友人を陥れたこの人と、3年も同じ寮で生活していたなど、信じられなかった。

ハリーは、ペティグリューを殺そうとしたブラックとルーピンを制した。
父さん──ジェームズは、親友が殺人者になることを望まないと思う。その理由が、実にハリーらしいと、ジェームズとリリーの息子らしいと思った。

「大丈夫かい」

「…何がですか」

逃げないよう片手をペティグリューと繋いだルーピンは、前を歩き道を照らしているAに小さく問いかけた。

Aはそれに敬語で返した。ハリーたち生徒の前であるから、という理由もあったし、ブラックにA・ミシェルであることを気が付いてもらえなかった以上、ミシェルとしてルーピンと話す必要がないと思ったからでもあった。

ルーピンは双方を汲み取ると、何も言わずにAの背中をぽんと叩いた。ルーピンの、無駄に干渉しないところが、Aは気に入っていた。

Aは元同級生としてルーピンと接することをやめたが、他に誰を頼れば良いかはわからなかったので、外に出てからも彼の側にいた。俯いて地面を見ながら、ただ無言で彼の隣を歩く。

皆で夜の校庭を歩く。ふと雲が切れ、校庭に明かりが差し込むと共に、影が落ちた。

“今夜、例の薬を飲むのを忘れていたようだから、吾輩がゴブレットに入れて持って行った”

今はハリーたちの魔法によって気絶し、ルーピンの魔法によってぷかぷか浮かんで移動しているスネイプが、ルーピンたちを追ってやってきたときに発した言葉を思い出す。

「今夜は満月…」

Aは、自分の影の隣にできた影が硬直したのを見て、顔を挙げた。ルーピンの両手足が震えだし、その姿が狼へと変わっていく。

後ろでブラックが「逃げろ」と叫んでいた。しかし、Aはルーピンをただ見ることしかできなかった。