君が何もかも見えなくなるその前に【太宰治】

3：今も明日もこの先も ページ3

いつもの様に帰りいつもの様に食事を作る。もちろん一人分である。太宰くんはいらないと言ったからである。



「今日は蟹なのになあー。」



ご飯いらないことも帰りが遅いことも、帰ってくるといつも違う香りを身に付けてくるのもいつもの事で、今更気にしてもどうなるの？
彼の浮気癖が直るとでも？なくなるとでも？一緒にいたいなら黙っていればいい。



食器を片付けて残りの仕事をやってい時…夜中にドアが開いた音が聞こえた。彼が帰ってきたんだ。



「太宰くんお帰り。」

「あぁ、うん。」



でも、決して彼は朝帰りだけはしないんだ。今朝…帰らないと言いながら…ちゃんと帰ってくるんだ。



「まだ起きてたんだ。」

「うん、仕事してるの。」

「自宅には絶対仕事を持ち込まない主義の君が…何故だい？」

「色々あるの…貴方の分の報告書や書類も含めてね。」

「ありがとう…いつもいつも。」

「昔からじゃない。」



今日の分を終わらせてベッドへ倒れる。


「はぁ…辛いや…苦しい…。」



苦しい…胸が痛い…



病状が悪化している証拠。でも、彼がまだ私を必要としている間は、一緒にいたい…。




「A…今大丈夫？」

「うん、大丈夫だよ。」

「明日はお弁当…作って欲しいな。あと、夜ご飯も食べるよ。」

「ドタキャンは受け付けないよ。」

「分かってるって。」




ほら、まだ大丈夫。彼が帰ってくるうちは…まだ大丈夫なんだよ？

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