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「あれ、先客だ。」
そのゆるりとした声は、荒んだ私の心を溶かすみたいに包み込む。…こういう精神が不安定な夜には特に。
…タイミング、最悪。
正直いまは誰にも会わない方がいい気がするのに、よりによって深澤さんに会ってしまった。
なんでいつもお兄ちゃんのことで悩んでるときに限って彼に会ってしまうんだろう。
『…深澤、さん、』
「なに、星見てたの？」
『…いえ、地面見てました。』
「え、地面？笑」
地面になんかあんの？と私と同じようにベランダの柵に手をかけた彼から、ほんのりシャンプーの香りがする。
顔をあげたら、隣に立った彼の髪が少し濡れていて、シャワーもう浴びたのかなと勝手に想像した。
「どうしたの、そんなに俺の顔見つめて。」
下に向いていたはずの彼の視線が突然こっちを向いて交わったものだから、思わずぴくりと肩が揺れる。
こうやって急に思い立ったように動く読めないところとか、揶揄うような反応を楽しんでるような深澤さんの視線はやっぱり苦手だ。
『…いや、お風呂、入ったのかなーと思って』
「ん？あぁ、入ったよ。暑くてなんかベタベタしてたから、」
彼が柵に体重をかけたのか、ギシッと軋む音がする。
その音に不思議な音を立てた私の心臓。まだほんの少し涼しい夜風が頬を撫でた。
「Aちゃん煙草嫌いだっけ？」
『え？いや、別に、』
「そっか、…ちょっと吸ってもいい？」
あぁ、一応気を使ってくれたのか。
煙草の匂いは好きでも嫌いでもないからこくりと頷けば、彼は箱から一本取り出して咥えて火をつけた。
さっきまで雲ひとつなかった空に、少しだけ黒い雲が浮かんでる。
「ここのベランダさー、結構好きなんだよね俺。」
そう言って、視線を彼方の光に向けてる深澤さん。
完全に戻るタイミングを失った私は、その隣で軽く相槌を打つ。
「仕事で嫌なことあってイライラしてるときとか、ここで煙草吸ってるとなんとなく和らぐ気がするっていうか、」
『…深澤さんでもイライラしたりすることあるんですね、』
「ん？あるよそりゃ、」
会社なんて嫌なことばっか、と軽く笑って、また煙草の煙を吐き出した。
もくもくと上がっていく煙はいま私の心の中にある靄のよう。
「Aちゃんももしかしてそういう気分だった？」
柵に頬杖をついて私の方を見た彼の目が細められる。
なんだろう、本当にこの人の隣にいると時の流れが変わるというか、調子が狂う。
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こゆき(プロフ) - 彩花さん» 気がつきませんでした…！教えてくださってありがとうございます！とても助かりました…！！ (2020年12月23日 0時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - れいさん» ありがとうございます…！これからも楽しんでいただけるように更新頑張ろうと思います…！ (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - べぺさん» コメントくださっていたのに気づかなくてごめんなさい…！待っていてくださる方がいるというお言葉で、更新頑張れそうです！ありがとうございます…！ (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - 何度もすみません！今日もう一度読み返してたら13ページ目のタイミングがタイミグになってました、！余計なお世話だったらすみません！ (2020年12月22日 14時) (レス) id: 7fda05ffd5 (このIDを非表示/違反報告)
れい - なんとなーく更新待ってました…！再開してくれて本当に嬉しいです！これからも楽しんでいきます！！ (2020年12月4日 1時) (レス) id: c0a052e646 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こゆき
| 作成日時：2020年7月28日 15時
