しぇあはうすの住人。

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さっきから、は？を連呼する電話の向こうの蓮は、やっと私の言葉を理解したのか、深い溜息をついた。


ーーーバカなの？

『ちょっと、それ蓮だけには言われたくないんだけど』

ーーーA、あの家出るのは別にいいと思うけどさ、さすがに男しかいないとこはやめとけって。

『でもあそこが条件1番良かったから。それに全然悪い人たちじゃないし、』


みんな大人だし、ちゃんとしてるし。
この1週間過ごしてみて危ない感じは全くしないから大丈夫でしょ。

女にも困ってなさそうだし、間違っても私は無いよ。

てかなんならつい最近まで1人には嫌われてたし。




ーーー良い人とか悪い人とか、そういう問題じゃねーんだよ。それこそ、そんなこと親父さんにバレたらお前、

『あの人の話はやめて』


最近忘れていたのに、思い出してぐらりと頭の奥が揺れた。…ほんとあんな家、出て正解だったと思う。


ーーーあー、はいはい。とにかく男だけのとこはやめとけって。次の家見つかるまでうちにいても良いし、

『やだ。てか矛盾してる、そこだって男しかいないじゃん。』

ーーー俺は身内だから別に問題ないだろ。

『でも蓮のとこにいたらお兄ちゃんにバレる。』



できるだけお兄ちゃんに会わないようなところに行きたかったの。

離れたら忘れられるかもしれないって思ったから。



ーーー…まあとにかく、一回会って話そ。

『もうこれ以上話すことなんてないよ、』

ーーーいいから。明日、いつものとこで待ってる。


それだけ告げて一方的に切られた電話。ツーツーという電子音だけが流れて、私はスマホを耳から外した。









佐「あ！電話終わったの？」


みんなの元に戻れば、佐久間さんが私を見つけてぱっと明るい笑顔を見せてくれた。

もう大体買い終わったよー、と言われカゴの中を覗けば入ってるのはほぼお肉のパックだけ。


『これ、お肉しかないじゃないですか。』
佐「ん？あるよ、ピーマン！」
『ピーマンだけじゃダメですよ。他にも野菜買わなきゃ、』

そう言えば、わかったよーと佐久間さんは可愛らしい声を上げた。


あ、そういや明日はせっかくみんなで焼肉しようって言ってくれたんだから、蓮との話は早々に終わらせないと。

家で焼肉なんてあの家にいた時はあり得なかったからすごく楽しみだ。




蓮、やっぱり私、このシェアハウスを出てくつもりはないよ。



カゴいっぱいに入った食材を見て、私は静かに頬を緩ませた。


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