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渡「…で、結局お前なに買いに来たの?」
駅前のショッピングビルに入れば寒いくらいの空気が肌を撫でる。
店に入るなり、「俺ちょっと行くとこあるからあとで合流しようね!」と佐久間さんはどこかに行ってしまって。
そんな彼を見送った後、私たちの前に立っていた渡辺さんは気怠そうに振り返った。
深「そーだ、なんか買いたいものあるって言ってなかったっけ、」
『あー、マットレス買おうかなって思ってました。前の方のやつ、ちょっと私には硬くて。』
仕事も再開したから収入も少し入ってきそうだし、もう少し柔らかいやつ買おうかな。
てか、
『渡辺さんこそ何買いに来たんですか?』
渡「は?」
深澤さんは私の付き添いに来てくれたけど、彼は何のために着いてきたんだろう?
休日だからまったくセットされていない髪がふわふわしてて、なんかまだ眠そうな顔してるのに。
渡「俺は佐久間に無理やり連れてこられただけだから。」
『あー、なるほど。じゃあ佐久間さん追いかけたほうがいいんじゃないですか?』
渡「やだ。あいつと回ったら騒いでめんどくせーもん、」
『じゃあ、私のマット決めるの手伝ってください。』
シェアハウスに来て約1週間、私は彼の扱い方がやっとわかってきた。
今ではこうして言葉のラリーも続くし、めんどくせぇって顔してるけど頼めば結局ついて来てくれるであろうことも、予想済み。
渡「……売り場、何階?」
ほらね。
『えっと、5階です。』
深「ちょいちょい、待って。俺いま空気みたいになってるんだけど、」
私の言葉に黙ってエスカレーターに乗ろうとした渡辺さんを追おうと足を進めれば、へらりとした笑みを浮かべた深澤さんに止められた。
『…あ、』
深「え、いまの"…あ"って、Aちゃん、完全に俺のこと忘れてたでしょ?」
『すいません、』
深「ちょ、謝んないで。それむしろ傷つくから、」
てか知らないうちにそんなに翔太と仲良くなってたんだね。と軽く私の肩に手を置いた深澤さんの少し優しく細められた目は、やっぱり苦手だ。
近づいた彼から香る香水の匂いも。
……なんか胸がザワザワするの。変な感じ。
『渡辺さん、行きましょう。』
渡「は?」
なんでか深澤さんの側は落ち着かなくて。彼の手からするりと抜け出すと、エスカレーターの前で止まっていた渡辺さんの背中を押す。
そんな私に、深澤さんは「えー、俺は?笑」といつものように揶揄うような笑みを浮かべてた。
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こゆき(プロフ) - なべふかさん» コメントありがとうございます…!!そのように言っていただけて本当に嬉しいです泣 今後もよろしくお願いします!!体調、気を付けます! (2020年7月19日 23時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
なべふか - コメント失礼します!!新しいStoryも素敵です*こゆきさんの言葉使いと言うんですかね…他には無い表現が読んでいて楽しいです、今後も更新頑張って下さい!くれぐれも体調には気を付けて下さい^^ (2020年7月18日 17時) (レス) id: 2b33477f89 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - まみさん» ありがとうございます…!!一応なんとなくのオチは決めてるんですけど、まだ迷ってるのでどうなるか楽しみにしていただけたら嬉しいです!!大人な深澤さん、わかりました…!たくさん盛り込みますね!今後もよろしくお願いします…! (2020年7月18日 13時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - このしぇあはうす楽しすぎます!!全員良すぎて1人に絞れません泣。しかし深澤担としては、からかってくる大人な深澤さんが更に見たいです!しかしツンなしょっぴーもかわいいさっくんも非常に上手いです!!流石です!!更新楽しみにしてます! (2020年7月17日 22時) (レス) id: 5ad6cf8e80 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» コメント嬉しいです…!!私もちょっと悪な感じな翔太くんが好きなもんで笑 ありがとうございます、楽しんでいただけるよう更新頑張ります…!! (2020年7月3日 16時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こゆき | 作成日時:2020年6月22日 21時