Scene3 日曜日 ページ3
次の週も、その次の週も、Aは現れた。
2人はセントラルパークの中でもひときわ目立つ大きな木の下でクッキーとたわむれながら他愛もない話をして過ごした。
話しているうちに2人は打ち解けて、お互いの共通点を見つけあった。
2人とも13歳で、日本人。それだけで彼らの間には通じ合えるものがあったのかもしれない。
「シュウ君には、なにか将来の夢はあるの?」
Aはそれとなくきいた。
「俺?俺はね、やっぱり世界チャンピオンになることだよ。Aは?」
「私は……」
「ワンワン!ワワン!」
Aのくぐもった声を打ち消すようにクッキーが吠える。
「クッキー、どした?」
Aの表情にかげりが見えるとクッキーは吠えるらしい。
彼女は心の奥底に、誰にも入られたくない部分を持っているのではないか、シュウはときどきそう思うことがあった。
かと思えばAはすぐ笑顔になってさっきのことなどなにもなかったかのように話し出す。
自分の手作り弁当を食べながら、シュウはAに話しかけた。
「Aは、日曜日以外はここに来ないの?」
「…うん」
「そっか、学校とか忙しいもんね」
「……そう、だよね」
「あ、そうだ。アメリカの中学校って、どんな感じなの?この通り、俺、中学校行ってないからさ」
「ん〜、そーだな、ええっと…」
Aは困ったような顔をして、
「…秋に、一年が始まるんだよ」
それぐらい俺だって知ってるな、そう思いながらもシュウは重くなった空気を変えようと、
「Aのおべんと、かわいいよね。誰が作ってるの?」
と、話題変換に走るのだった。
もう一つ、Aは午後1時までには必ず帰っていった。彼女がシュウと時間を共有するのは、毎週日曜日の、午前10時から午後1時までの間だけだった。
2人が別れる頃にはまだ太陽も天高いところにいる。
2人と1匹の影は、とても短かった。
クッキーだけがクゥンと寂しそうに鳴いた。
ほらほら、あの人から言いたいことがあるみたいですよ☆
シスコ「お前はオレだけ見とけばいいんだよ」
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通行人 - ふと思い出して、久しぶりに来てみました。やはり引き込まれる。 (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7f966a9c98 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!少ない脳を振り絞って書いただけありました(笑) トプ画のことまでお気づきとは…さすがです! (2019年2月15日 23時) (レス) id: a6baa0d096 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あと、トプ画ですが、人物を抜いてオーダーされていましたね!そこがとても内容と合っていてさすがだな〜とセンスに感動しています 次作品も楽しみに待っていますね〜^^ (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!!!フブキもシュウも彼等らしい爽やかな感じで、読んでいて温かくなりました^^とても読みやすい文章に文間、ストーリー構成、とても勉強になります!私も瀬央さんを見習って、風景と心理描写をシンクロさせたラストへ進みたいです (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - みずきさん» そう言ってもらえるととても嬉しいです。ベイバをこよなく愛してるから、学校の作文より本気になって書いてるかもしれません(笑) (2019年2月12日 23時) (レス) id: d89c1d2e97 (このIDを非表示/違反報告)
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