第15話「炎と闇の逢瀬」 ページ18
「…っと、コイツらも出しとくか」
Aはそう言って、開いていた右手を閉じる素振りをみせ、直ぐにまた開いた。同時に黒の靄が出てきて、バタッ、と重量のあるものが落ちてきた。
先程彼女に攻撃しようとした、2人の魔導士だった。彼女の空間魔法から解放され、白目を向いたまま微動だにしない。
吹き飛ばされた10人のように、魔は欠片も残っていなかった。
「…ほう、君も団長かな？若いのにすごいねぇ…僕が相手をさせていただこう」
言葉としては至極丁寧、だが体に纏った多大な量の炎は、怒るように燃え盛っている。自身の髪さえ焼けて煤けているのに、気づかないようだった。その空間ごと焼く勢いの炎は、Aに近づくにつれて強くなっていく。
脳乱のキルラス。恐らく今回攻めてきた魔導士達の中で、1番の強さ。四代属性の中で最も攻撃力の高い炎魔法の使い手。クローバーの団長とほぼ同量の魔力。
ここまでの条件が揃えば、誰だって恐れ慄く。団長でもない、魔法騎士団でもない人間なら尚更だ。彼女がどれだけ強くても、戦い慣れしてない本能は怖がる。
――――――そう、思っていた。ひとりを除いて。
「なんで俺なんだか…団長でもないのに、めんどいなぁ」
これほどのプレッシャーに怯える気配は全くなく、容易に「めんどい」と呟いた。どれだけ余裕があるのか、それとも事の重大さを軽んじているのだろうか。
「まぁ、いいよ。あんたならまだ楽しめそう」
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作者名：ミヤビ | 作成日時：2018年8月28日 20時
