探してたもの、見つけたかもー２ー【藤原樹】

７９ ページ29

樹side











目が覚めた。









カーテンが閉めてある窓から光が漏れているところからして

外はある程度明るくなっている時間帯なことが分かる。









まだ覚めきらない頭と

今にでももう一度眠れそうな重たい瞼を何とか持ち上げて

俺の隣で穏やかに眠る愛おしい人を見つめる。









前と同じように

俺に背を向けるようにして眠っているAちゃん。









こういう時ってさ？

こちらを向いて自分にくっついて眠る彼女の寝顔を

先に起きた彼氏が眺めるのが定番なんじゃないの？









なんて思ったけれど。









寝返りをうって向こうを向いてしまっているくせに

腕枕として伸ばした俺の腕に甘えているみたいに

俺の手を握っているのはあざとすぎじゃない？









……そんなところも、愛おしくて仕方ないけど。









少し離れてしまっている体を引き寄せたい気持ちと

それで起こしてしまうのは可哀想だなぁと思う気持ちで

せめぎ合っていたら。









『ん、』









ごそごそと動き出したAちゃんは。









樹「……ふふっ」









薄着で少し肌寒かったのか

寝返りをして俺にぴたりと寄り添うように体勢を変えた。









布団から少し出てしまっていた肩にちゃんと布団をかけて

Aちゃんを包み込むように腕を回した。









今も改めて思うけれど

想像していたよりも、服を着ている時よりも

華奢に感じたAちゃん。









昨晩はそんなAちゃんを

壊してしまわないように、大切に、丁寧に抱いた。









触れれば触れるほど、彼女への愛おしさが自分の内側から溢れ出す。









そんな感覚になる行為はいつぶりだっただろう。









より彼女のことを愛おしく思えたし

大切にしたい、好きだ、愛して愛されたい、なんて

甘ったるいくらいの感情が俺の中を支配している。









樹「もっと、俺のこと好きになってね？」









俺がこんなにもAちゃんのことで頭いっぱいになっちゃったんだから

Aちゃんも、誰の入る隙もないくらい

俺のことで頭の中がいっぱいになっちゃえばいいのに。









なんて、俺ってこんなに女々しかったっけ？









でも。









これが今の彼女への本音なのだから仕方がない。









『ん……』









あ。

そんな愛おしい俺の彼女が目を覚ましたらしい。









樹「おはよ」











.

８０→←７８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す