笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ8)

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第55話『大きな事件』ページ8

杏奈side

「東西関東建設の男って、このビルの工事関係者だろ。オープン前のビルに、工事関係者が出入りしてても別に不思議じゃないし、不法侵入じゃない。猫が出入りしてても勿論そうだ」

決めつけた上杉くんに、若武くんが叫んだ。

「いや、これは事件だ。チームリーダーの俺の勘がそう告げている。その工事関係者がマダニを飼っていて、ここにばら撒いたのかもしれない。どうだ、事件だろう」

小塚くんが真面目な顔で答えた。

「マダニの生態から考えて、それは不可能だよ」

上杉くんがふっと笑う。

「若武先生は、パニック映画の見すぎだ。おまけにKZから身を引くって、言ってたんじゃね？」

ところが、若武くんはキッパリ首を横に振った。

「非常事態との判断で、しかたなく指揮を執ることにしたんだ。これは絶対に事件だ。俺の勘に狂いはない」

黒木くんが静かに口を開く。

「若武先生に賛成だ」

これにはみんな驚いた。

意外だった。

黒木くんって、こういうのすぐに賛成しなさそうなのに。

「その心は？」

上杉くんが眉を下げると、黒木くんはちょっと笑った。

「俺が聞いたところでは、このビルの建築を請け負ったのは大々陸建設だ」

んん？

「その時の条件では、子会社を使わず、直接に大々陸建設が施行するってことになっていた。珍しいケースだから、ニュースで流れたんだ。大きな建設会社の仕事は、たいてい子会社とか孫会社、あるいは下請けに出すものだからさ」

そうなんだ。

「だが、このビルに関しては、100パーセント大々陸建設が請け負って造る。これまで大々陸建設は、マンションの施工が多かったんだ。ここで自社の力だけでファッションビルを成功させて、商業ビル造りに進出するつもりなんだよ」

建設会社も色んなことを考えているんだ。

「それなのに、どうして東西関東建設の人間が出入りしているのか」

確かにおかしい！

「建設業界って日頃から色々と問題があるって言われているところだからね。談合とか、汚職とかさ。これ、結構面白い事件になるかもしれないよ。」

事件が起こるのはあまりいい事じゃないけど、探偵チームからしたら、事件がない方が問題なのか。