笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ46)

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第13話『数学』ページ46

杏奈side

その後、みんなで固まって夜の道を歩きながら、小塚くんが言った。

「上杉、完全数の発見、進んでる？」

完全数ってなに？

若武くんも目を丸くする。

「完全数って、何だ？」

上杉くんは、右手の中指で眼鏡の中央を押さえ、ちょっと持ち上げた。

「完全数っていうのは、その数自身を除いた約数の和が、その数と等しくなる数のこと」

ん？どういうこと？

「たとえば、6。6の約数は、6自身を除くと、１と２と３だろ？この約数の１と２と３を足すと、元の6になる」

本当だ！すごい！

「だから6は、完全数なんだ。28も、そう。28の約数は、1、2、4、7、14で、これらを全部足すと28になるから、完全数」

面白いかも。

「今までに、48の完全数が発見されている。俺は、49個目を探してるとこ」

そう言いながら、上杉くんはちらっと彩ちゃんを見た。

「おもしろい？」

彩ちゃんが力を込めて頷くと、上杉くんは、ふっと笑った。

「友愛数、ってのもあるんだ」

名前が可愛い。

「友愛数は、2つの自然数同士で、その数自身を除いた約数を足すと、相手の数になるっていう数字。1番小さなのだと、220と284だ。それぞれの約数を足してみろよ」

そんな計算すぐ出来るわけない！

彩ちゃんが焦っていると、若武くんが携帯電話を出して、ディスプレイに電卓を呼び出して、ものすごい勢いで数字を打ちこんだ。

「ほんとだ、220の約数の和は、284だ。284の約数の和も、220になる」

顔を上げた若武くんのふたつの目には、熱い光が浮かんでいた。

「俺、生まれて初めて数学に感動したよ」

上杉くんは苦笑する。

「よかったな」

上杉くんは本当にすごいと改めて思った。

きっと上杉くんは、本当に数学が好きで、とことん研究しているんだろう。

そんなに何かに一生懸命になれるってとっても素敵な事だと思う。

上杉くんは、数学を愛してるんだね。

私はそういうの無いから、羨ましい。

私が上杉くんをじっと見つめていると、上杉くんが視線を感じたのか、私に視線を向ける。

「何か気になることでもあったか？」

「ううん。上杉くんってすごいな〜って思って」

上杉くんは一瞬驚いた顔をしてから、パッと私から視線を外した。

なんか、感じ悪い。

私は小走りして上杉くんの近くに行くと、顔を覗き込む。

「なんで無視する、」

私はそこまで言って固まる。

だって、上杉くんの頬が少しだけ赤くなっていたから。

え、どうして照れてるの？