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第76話『会いたい』 ページ29

杏奈side


なかなか寝付けず、朝の5時まで私は起きていた。

そろそろ眠ろうとスマホを枕の横に置いた時、ちょうど電話が鳴った。

こんな時間に誰だろうと、ディスプレイに映る文字を見ると、そこには『上杉くん』と表示されていた。

私は通話ボタンを押して、スマホを耳に当てる。

「・・・もしもし」

《もしもし。悪い、こんな時間に》

上杉くんの優しい声が耳元で聞こえて、なんだかドキドキする。

《今、金田の病院の救急ヘリを呼んでるとこ》

うまくいったんだ。

これで、美門くんも助かる。

「ありがとう。お疲れ様」

《・・・何かあったのか》

「え?」

《明らかに元気ないだろ。眠いからってわけでもなさそうだし、何かあったのか》

電話越しなのにすごいな。

《別に話したくないなら無理に言わなくてもいいけど。》

上杉くんの遠慮したような声が聞こえる。

「・・・上杉くん」

私の瞳から涙がこぼれる。

「会いたい・・・っ」

《え・・・》

電話越しでも、上杉くんが驚いているのが伝わってくる。

困らせてるよね・・・。

「ごめん、今の忘れて・・・」

《待ってろ》

上杉くんはそういうなり、電話を切ってしまった。

待ってろって・・・。

私はまさかと思い、急いで眠っているお母さんの元に行く。

「お母さん。ちょっとランニング行ってくる」

お母さんはまだ寝ぼけていて、適当に返事をするとまた眠ってしまった。

私は部屋着のまま家を飛び出す。

私はマンションの5階に住んでいるから、エレベーターで1階まで降りると、マンションの前まで行く。

するとジャストタイミングで、自転車に乗った上杉くんがものすごいスピードで私のところまで来たのだ。

額に汗が滲んでいて、本当に急いできてくれたんだと申し訳ない気持ちになる。

「どうした」

メガネの向こうの冷たい瞳から、気遣うような視線が伺える。

何故か上杉くんが来てくれたことに安心して、私の瞳からはまた涙が溢れてきた。

上杉くんは、ギョッとして目を見開く。

私は上杉くんに背を向けて涙を拭う。

「ごめんほんと。ごめんなさい・・・」

泣き止まないと。

人前で泣くなんて私らしくない。

いつも笑顔でいるのが私なんだから、笑わないと。

刹那、頭の上からタオルを被せられる。

ふわっと、上杉くんの香りが匂ってくる。

「俺、黒木みたいに慰められねーから、とりあえず泣きやめよ」

ちらっと上杉くんを見ると、上杉くんの頬が少し赤くなっていた。

私はタオルに触れる

第77話『ありがとう』→←第75話『劣等感』



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桜@ひなた - 落ちは、翼がいいと思います! (2023年2月19日 18時) (レス) @page4 id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - オチは、翼か黒木くんがいいです!推しなので・・ (2022年2月27日 8時) (レス) @page3 id: 8e64252870 (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - オチは翼がいいです!! (2021年3月19日 12時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
マカロンY - 320526 オチは翼 (2021年3月4日 21時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
bigaru(プロフ) - 落ちは翼希望です!翼落ちのお話が少ないので・・・ (2020年7月29日 19時) (レス) id: 4e79474d44 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年6月17日 0時

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