笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ28)

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第75話『劣等感』ページ28

杏奈side

私は家に着くと、手洗いうがいもせずにベッドに寝転がる。

疲れたな・・・。

なんだか、とっても長い夢を見ていた気分。

ああやって中学生だけで事件を解決していくなんて、本当にみんな凄い。

「劣等感・・・」

一緒にいると自然と感じてしまう。

・・・ダメだよね。ネガティブはやめよう。

「杏奈ー。ご飯食べちゃいなさいよー」

母に言われ、私は手洗いうがいをしてからリビングに行き、用意されてあるご飯を食べる。

私の家庭は、父、母、兄、姉、私の普通の家族。

みんな優しくて、私は幸せ者だと思う。

でも、なぜか心が満たされない。

家族は私を愛してくれていて、私も家族を愛している。

世の中には、最悪な家庭環境で育った人達なんてたくさんいるし、私は幸せな生き方をしている。

でも、本当にそれだけで幸せなら、家族がみんな死んでしまって、私一人だけが生き残ったら、私はどうなるんだろう。

幸せなものを失った私には、もう何も残らない。

その先、何を生きがいにして生きていけばいいのか分からない。

よく漫画とかアニメに、『幸せな家庭に生まれただけで十分幸福だろう』みたいなセリフがある。

じゃあ幸せな家庭に産まれたら、顔がブスでも、なんの才能もなくても、ドジで、他人から嫌われてもいいのかって話だ。

家族からさえ好かれていればそれだけが人生の幸せだなんて、私には思えない。

親がいなくても、才能に恵まれている人。

親がいても、才能に恵まれない人。

どっちの方が幸せで、どっちの方が不幸だなんて比べる気もない。

でも、私は『家族がいるから幸せじゃん』とか、『悩みなくてよさそうだよね』とか『杏奈になら何を言っても傷つかないから』とか、そういう考えを持っている人がいちばん嫌い。

こういう性格でいたら、よく言われる。

『悩みなさそう』とか結構強烈ないじりネタとか。

まず悩みない人間なんているわけないし、暴言を吐かれてなんで傷つかないと思うのかも謎。

みんなうるさい。

・・・なんかちょっと、気分悪いかも。

「ごちそうさま。美味しかったよ、お母さん」

「あんまり食べてないわね。大丈夫？いつもなら白米2杯は余裕で食べてるのに」

「んー、ちょっと頭痛いかな。お風呂入ったらすぐ寝るよ」

KZのみんなといたせいで、変な劣等感が心を支配している。

私はお風呂に入ってから、ベッドに寝っ転がってスマホをいじる。

退屈・・・。

なんだか今夜は、寂しいな。