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第71話『大切』 ページ24

杏奈side


「あきらめろ、若武」

上杉くんが言った。

「それよりダンスに集中した方がいい。それにKZの監督から、呼び出しがあるかもしれないし」

え、ほんとに?

「今日、おまえも美門もいなくてボロ負けだったんだ。美門がしばらく復帰できないとなると、監督も考えるだろ。来週の日曜日の試合は、県大会出場に影響する。何がなんでも勝たなけりゃならないとなったら、お前を入れるしかないって考えるはずだ」

若武くんは不思議そうに目をしばたたかせた。

「ボロ負け?何で?KZには70人もメンバーがいるじゃん。俺や美門がいなくたって、なんとかなるだろ」

上杉くんは首を横に振る。

「それが、ならねーんだよ」

そう言いながら指で、テーブルの上にサッカーのゴールとピッチを描いた。

「若武や美門は、ボールを追いながら同時に敵の配置を見て判断し、動ける選手なんだ。マイボールになるとみんなが勢いづいて、一斉に敵陣を目指して上がっていくのが普通だけど、若武は上がりながらも、相手のセンターバックを防げる位置に必ず立っている。それをできるやつは、KZじゃ若武と美門の他にいないんだ。だからこっちにボールが来て、これから攻め込むもうと思った瞬間に敵のセンターバックに襲われてボールを奪われると、一気にピンチになる。若武や美門がいれば、そこでセンターバックを潰してくれるから、球キープできて、得点に繋げられるんだ」

だから今日の試合、5対0っていう結果になったんだ。

「え・・・そうかぁ」

そう言ったのは、若武くん自身だった。

「俺、全然、意識してなかったよ」

考え込んだような表情になりながら、呟く。

「他人から見ると、そう見えてたんだ」

若武くん、どんな心境なんだろう。

出会った時から何を考えているか丸わかりだった若武くんの気持ちが、この時ばかりは全くわからなかった。

でも、それってとっても凄いことだと思う。

私は若武くんに優しく微笑む。

「若武くんは、サッカーチームKZの心臓なんだね」

ピッチ下に君臨してきた意味がよくわかる。

若武くんみたいな人にしかできないんだ。

上杉くんは少し驚いたように私を見る。

「神崎って、そういうこと言うんだ」

なんだかディスられている気分になり、私はムッとする。

「どういう意味ですか」

「そういう言い方は、神崎っぽくないなって」

そうかな?

上杉くんから見た私って、一体どんなのなんだろ。

第72話『脅し』→←第70話『理解』



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桜@ひなた - 落ちは、翼がいいと思います! (2023年2月19日 18時) (レス) @page4 id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - オチは、翼か黒木くんがいいです!推しなので・・ (2022年2月27日 8時) (レス) @page3 id: 8e64252870 (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - オチは翼がいいです!! (2021年3月19日 12時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
マカロンY - 320526 オチは翼 (2021年3月4日 21時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
bigaru(プロフ) - 落ちは翼希望です!翼落ちのお話が少ないので・・・ (2020年7月29日 19時) (レス) id: 4e79474d44 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年6月17日 0時

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