笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ20)

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第67話『黒木の報告』ページ20

杏奈side

リーダーらしく会議の舵取りをした若武くんに、黒木くんはちょっと会釈してから口を開いた。

「東西関東建設も調べた。従業員2人の有限会社だ。主にスリーブの仕事をしている」

スリーブ？

「スリーブっていうのは、建物を建てる時、コンクリートを流し込む前に埋めておく管のこと。この中に、後でガス管やでんせん、電話線を通すんだ」

なんでも知ってるな、この人。

「その建物を使う人間にとっては必要不可欠なんだけど、建設現場では、小規模な会社が請け負っていることが多い。東西関東建設は、つまり、小規模な下請け会社のワケ」

そうなんだ。大事な仕事なのに。

「東西関東建設の事務所は、駅のすぐ裏手にある。昨日、行ってみたけれど、社長も入れて3人の小さな会社だから、道を聞くふりをしてドアから中に入ったら、もう全部が見渡せたよ。社長の人相は、アーヤが言った特徴の通りだ」

つまりその男の人は、東西関東建設の社長さんなんだ。

「事務所の壁に一級建築士免許証が飾ってあったから、名前もわかった。青池浩太だ」

上杉くんが、冷たい感じのするその目を光らせる。

「おかしくね？大々陸建設っていったら、誰でも知ってる建設会社の大手だろ。東西関東建設の方は今回、初めて聞くくらい小さな会社じゃん。2社の間には、天と地の格差がある。それなのにアーヤの話じゃ、社長同士がタメ口きいてたんだろ。何でだ」

確かに言われてみれば変かも。

「それも調べた」

黒木くんはゆとりの笑みを浮かべる。

「大々陸建設の会社のホームページによると、社長加藤雅也は、Ｍ県の県立高校建築科を出て、東京にある東都大学建築科に進んでいる。この東都大学の加藤の卒業年度の卒業者名簿を手に入れたら、建築科の卒業生の中に東西関東建設の社長、青池浩太の名前があった。つまり2人は、大学の同期生なんだ」

だからタメ口なんだ。

「ちなみに東都大学の卒業生たちは『東都倶楽部』というOB組織を作って交流を持っている。アーヤが見た『東都倶楽部』は、その事務所なんじゃないかな」

「つまり、」

若武君は、いつになく厳しい顔だった。

「今は大々陸建設の社長になっている加藤雅也の頼みで、東西関東建設の社長青池浩太は、この庭で3箇所の何かを処理したってことだよな」

黒木ん君が頷いた。

黒木くんが言うには、今月の初めに大々陸建設で自ら命を絶った人がいたらしい。