烏野高校男子バレー部白昼堂々痴漢事件【HQ】

【06】貴方は性善説を信じますか？ ページ6

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「スガさんが現れたのは犯人が消えてからすぐ……せいぜい一分くらいなんです」
「それですぐ後に俺が現れたんですよね？」



　当時の僅かな沈黙を破ったのは何でもないような顔で扉から顔を覗かせたスガさんだ。しかも山口は彼が扉を開ける瞬間を見ていた。そう、犯人が逃走する猶予がすぎる。そうなると必然的に部室の近くに居た人間ほど犯人の可能性が高くなってしまうのだ。


邪なのを考慮した上で考えるなら、その場から逃走しようとした犯人が体育館から近づいてくる山口の存在に気がつき、誰にも見られず離れるのが困難になったため何気なく部室に用があったように振る舞わざるを得なくなってもう一度部室に入り直したシチュエーション。


自身が怪しいことをスガさんも自覚しているらしく苦笑いで唸るばかり。私だって分かっている。私たちは推理小説の登場人物ではないのだから、いつだって完璧なアリバイとか推理の抜け穴がある訳でもなく、全てに意味があるという訳でもないことを。



「タオルを取りに行っただけって言っても言い訳っぽいもんな〜」
「山口はなんで部室行ったの」
「Aさん起こした方がいいかなって様子見に行ったんだよ」



　結局はそこなのだ。やった証拠も無ければやっていない証拠もない。スガさんを信用するかしないかなんて一度勘ぐってしまえば残りの部員も同じジャッジを下さねばならなくなる。ここは正式な法廷ではないかもしれないけれど、裁判に信じるなんて行為に意味は無い。判決は証拠があるかないかだもの。


それでもやはり私はここで屈する女ではない！ 大丈夫、全員の行動を照らし合わせて行けばきっとどこかで新手な可能性だって出てくるのだから。早く職員会議から戻ってきてくださいね武田先生。必ず犯人を貴方に突き出して見せます。無惨にも触られてしまった可愛い可愛いマイバストの敵討ちをするためにも。



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