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10.愛してる ページ11

▽▲▽




不思議に思って彼女の顔を覗き込むと、Aは顔を赤く染めながらかすれ声で言った。




『ほんとはね、私があげたかったの』


「僕に?どうして?」


『……おそろい、になるなぁって思って』




首に掛けたタオルの端で口元を隠し、
目を逸らしながらそう告げたA。

僕と目が合った瞬間耐えられなくなったのか、
耳を真っ赤にしてうつむいてしまった。


そして、赤くなったのはきっと僕もだ。




「…僕とでいいの?」




そんなことを言うのが精一杯だった。

いいって言ってくれてるんだからいい話なのに、
ただもう1度Aの口から聞きたくて。


僕の問いかけが沈黙に消えてしばらくして、
Aが僕の腕の青いタオルを手に取った。




『…無一郎くんがいい。……駄目、かな』




つま先立ちをしたAが腕を伸ばし、
僕の首にふんわりとタオルを掛けてくれた。


夏の夜で汗ばんだ首が暑く、熱くなる。

タオルによって首回りにこもった暑さか、
それともこの子だから起こる熱さか。


きっと両方。
でも、大きいのは断然後者だった。




「ううん。しよっか、おそろい」




パッとAの顔が華やいだ瞬間、
笛のような音と共に辺りが明るく照らされた。


次々に空に上がる花火のお陰で、
隣にいるAの顔が先刻よりもよく見える。

花火に夢中な彼女が視線に気づかないのをいいことに、横目でこっそりAを眺める僕。


ずっと見ていたい。
花火はもう音だけで充分だった。









.









『キレイだったね…!!』


「そうだね」




先刻よりマシになった人の波に逆らって、
焼きいもが売っているお店まで戻ってきた。

まるまるとした大きな芋は、
中も鮮やかな黄色ですごく甘い。


Aも満足したようで、
両手で美味しそうに焼きいもを頬張っていた。




「ふふ、ここ付いてるよ」


『え、どこ…!?』




唇についた黄色い芋のかけらを拭いとると、
Aはまた恥ずかしそうに顔を赤らめる。

先刻より小さく芋をかじるAと芋のついた自分の指を交互に眺めて、僕はなぜか違和感を抱いた。


既視感というか、知っている気がする。
前にも僕は誰かにこんなことをしただろうか。







「だからさ、ついてるんだって。食べるの下手すぎない?」




『つけてないし。食べるの上手くなったもん』




「ほっぺにつけといて何言ってんの、馬鹿」

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設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:恋愛
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指切り(物理) - 素敵な作品ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ。いやぁホントに神すぎます! (2022年4月5日 10時) (レス) @page25 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ぱらさん» 全部の言葉が光栄でしかないです、めっちゃ幸せです…!!こちらこそありがとうございます🙇‍♀️ (2021年11月11日 17時) (レス) @page24 id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
ぱら - 楽しく読ませて頂きました!一個一個の言葉が胸に染みました…!素晴らしい作品をありがとうございます!! (2021年11月8日 17時) (レス) id: 1cfc9a3f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ミユモンさん» わあぁありがとうございます光栄です…っ!!のんびり更新ですがどうぞお付き合いください🙇🏻‍♀️ (2021年10月28日 23時) (レス) @page11 id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ミユモン(プロフ) - 言葉の使い回しがすごく好みです…更新頑張ってください🙌✨ (2021年10月28日 20時) (レス) id: 2ad0dd50d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年10月7日 23時

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