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「…ん、」
すぅ、っと息を吸い、其れからゆっくりと吐く。太宰が重い瞼を少し開けば、目の前はカーテンで閉ざされていた。
まだ暗い外。何時なんだろう、と辺りを見渡すものの、時間が確認出来そうなものは見当たらなかった。
ふかふかのベッドの寝心地はとても良く、久し振りにゆっくりと眠れた気さえしてくる。包帯が巻かれた腕で自身の身体をぎゅうっと抱き締め、其れから目を閉じて呟く。
「…私は。……私は、大丈夫。」
自身に言い聞かせているかのような言葉で在った。否、本当は、今此の言葉を口にしなければ、また
太宰の顔色は、少し良くなっていた。_とは言っても、矢張白い侭で、軽く貧血を疑いたい程では在るが。
「…。」
閉じていた瞳をゆっくりと開ける。其の侭、感覚の無い足でふらつきながらもベッドを出た。どうやら外套は脱がされたらしく、靴も無いが為に裸足で冷たい床を歩いた。
太宰は、しゃっとカーテンを開けた。どうやら此処は、医務室のようで在る。
「…本当、ダメダメだよ私は。」
何に対しての言葉か。まだ少し星が光る空を見上げベランダに出ては、太宰はそう呟いた。頬を冷たい風が撫で、ふわりと髪を舞わせた。医務室はどうやら、そこそこ高い場所に位置しているらしかった。
____飛び降りれば、死ぬことが出来るのではないか。
太宰の脳に、そんな言葉が浮かんだ。
この高さで在れば、簡単に痛みも感じずに
「…待っててよ、私も、____私も今其所に、」
ゆっくりとフェンスを越える。嗚呼、如何してこんなにも、私の口角は上がるのだろう。待ち望んだ死。失敗を続けてきた死。求めてきた救い。
「やっと____、」
フェンスを掴んでいた手を、ゆっくりと離す。身体が重力に従って、其の侭下へ________。
.
.
「…っ、!!!」
下へ行くことなど無かった。腕を、誰かに掴まれたからだ。ぶらんと闇に足が放り出されている。腕に込められる力さえ無ければ、死ねたと言うのに。
太宰の表情は無で在った。其れが、この上なく恐ろしく感じられるのだ。
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ラッキーカラー
あずきいろ
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めい - 好きです!もっと評価されるべき!次の更新待ってます! (2020年4月5日 21時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
シラゆ - コメント失礼します(小声)表現の仕方や夢主の設定、とても心に刺さりました。勉強不足を感じさせられるほどの語彙力、尊敬します!文スト?を知らない私でも物語にのめり込めました!更新頑張ってください!コメント失礼しました。 (2020年3月31日 9時) (レス) id: dc5a42bdb9 (このIDを非表示/違反報告)
すりーぷ(プロフ) - 好きです……その場その場の背景?が見えて…なんと言うか……とっても綺麗で文ストの雰囲気等も確りとあって……続き楽しみに待ってます…!応援してます、頑張って下さい!(語彙力が無くて…) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 6c2b3e4a08 (このIDを非表示/違反報告)
うみ(プロフ) - 情景描写がとっても綺麗で、1話読んだら「あ、これ好きだな」って思いました!文ストの雰囲気を残しつつ独自の世界観もあって続きが楽しみです!!頑張ってください!応援してます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: c77cf16874 (このIDを非表示/違反報告)
暁月 - あ、好きです。 とっても読み易くて、なんというか…「わあ…!!」となるような感じの……はい。(これが語彙力がない人の見本です) 更新頑張ってください!応援してます。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙藤 | 作成日時:2020年3月27日 2時