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あれから数週間後、ある部活をやっていたときにその連絡は来た。
「Aさん、急いできて！」
どりみーと打ち合っていた私は先生の切羽詰まった表情に驚きを隠せなかった。
しかし、何かあるのだろうとどりみーに謝りその場を離れる。
先生に着いていけば、何も言わずに車に乗せられた。
向かった先は、市立病院だった。
母さんが刺された。
それだけを聞き、病院に着いた瞬間緊急医療室まで通された。
赤いランプが光っている。
今、その室内に母さんがいる。
警察の方が寄ってきて、私に事情を話してくれた。
13時頃、昼食をとるために会社を出たという母さん。
そのまま近くのコンビニに向かっている途中、男に刺されたとのこと。
目撃者により通報、及び救急車へと連絡が来た。
男は細身で背は170cm程、黒いトレンチコートを着ていて、顔はよく見えなかったらしい。
身に覚えは？
そう聞いてくる警察官。
そんなこと、ないと思っていた。
ないと信じていた。
でも...
恐らく、それは
『父さんだと思います...如月雄一郎、○○会社で勤めていた筈です』
「お父さん？」
『はい。もう離婚しているので』
「渾名は、分かるかな」
渾名...
こんな世界の細かい部分は知らんかったからなぁ...
でも、確か母さんが言っとったはずや
何て言うとったかな、確か...
『恐らく、ユイロ、です。』
雄一郎の名前を型どったものやったはず。
「ありがとう、調べてみる。
また、何か分かったら来るからね」
『...はい』
椅子に座り母さんを待つ。
脳に浮かぶのは何週間か前にニュースで見た事件。
母さんも、あのニュースの男性のように死んじゃうん...？
『...っ、母さん』
人が、身近な人が死ぬのが怖い。
高いところから見下ろす虹の谷。
良く分からない化け物に襲われていく人々。
自分のせいで起こった、食事。
命は儚いものだって、知っているから。
やから...
これ以上、現実を見せんとってくれ...！
手を組みひたすらに祈る。
いもしない神を、都合のいいときだけ頼る。
人間とは醜い生き物だ。
だからこそ...
だからこそ、神に見捨てられてしまうのだろう。
出てきた医者は、此方を見ると切なそうに首を横に振った。
なんで、そんな声も出ずにただ医者の話を聞く。
記憶に残っていないのに、理解は完璧に把握している。
奥で静かに眠る母さんの姿が...
なぜか、とても美しく感じてしまった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年1月14日 22時
