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そんな顔でさえもかっこよく見えて、結局なにも返せず、歩き出した彼の背中を追う
初めて会ったときよりも色が落ちてきた金髪が、動きに合わせて僅かに揺れた
…時が流れるのは、あっという間だ
まだ数日しか経っていないような気持ちでも、周りには、私の体には、確かに時が流れている
この手だって、この後ろ姿だって、いつまで見れるか、分からない
「うわ、凶じゃん…」
「あ、私も凶です。お揃いですね」
「こんなお揃い要らんわ」
おみくじを引くと、正直者の神様は、しっかりと私の運勢を最悪な物にしてきた
きっとこの中に大凶というものが入っていれば、私はそれを引いていたのだろう
どうやら川上さんも凶だったようで、冗談で「お揃い」なんて言えば、彼は笑ってツッコミを入れてくれた
二人で既に大量の紙が結びつけられた木におみくじを結んで、今度は参拝をしに行く
お賽銭箱に五円玉を投げ入れて、鐘を鳴らし、手を合わせる
もっとお金入れれば良かったかな、と後で少し後悔したのは秘密だ
「…願い…」
…願いは、決まっている。決まっている、筈だった
まだ生きたい。まだ死にたくない。病気を治したい
なのに、いざ願おうとすると、私が本当に願いたいのは、そうじゃない気がして
―――…川上さんが、この先もずっと、幸せでありますように
気づいたときには、そう神様に願っていた
…死ぬのも、確かに怖い。自分という存在がこの世から消えてしまうのは、怖い
でも、それよりも…
「葉月さんはなに願ったん」
「内緒です」
「ケチやなぁ」
彼が不幸になる事の方が、もっと怖い
「川上さん、これどうぞ」
参拝を終えて、トイレに行ってくると言って川上さんが居なくなった隙に買った、同じ色の同じお守りを彼に差し出す
お金払う、と財布を出そうとする彼に「いつも出してもらってるので、今日くらいは」と言うと、渋々といった風ではあったが、お礼と共にお守りを受け取ってくれた
彼は受け取ったお守りに書かれた文字を読むと、ふっと笑みを溢す
「学業成就のお守りじゃん」
「どうしてもお揃いにしたかったので」
「…そか」
そか。と呟いた時、川上さんの頬が微かに赤く見えたのは、気のせいだろうか
…気のせいじゃないと良いな、なんて
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白菜(プロフ) - すずどらさん» こちらこそコメントありがとうございます。とても励みになります。誰かの心に響くような話を書くことができて良かったです。更新頑張ります (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - あやかさん» こちらこそコメントありがとうございます。誰かを好きになるって大変なんだな、と書いた本人ながら思ってます。これからも切ない恋の模様を見守って頂けたら幸いです (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 僕の推しは川上さんなので凄く嬉しかったです。せつない作品で、とても良いな、と心に染みています。また、続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2019年12月15日 10時) (レス) id: 66850163cc (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - せつない作品をありがとうございます。現在さめざめと泣いております…。続きをお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。 (2019年12月15日 0時) (レス) id: 7a1dedd698 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Qさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます!!無料世界一周旅行出来るくらいの作品が書けているかはまだまだ自信ないですが、そう言って貰えると本当に嬉しいです!!Qさんもインフルエンザにはお気をつけて! (2019年12月9日 14時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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