317 世界意志決定機関 ページ10
それは何も無い空間から現れた。
虚空から出現したのは、空飛ぶ雷門のキャラバン……のようなものだった。
さらにその運転席の窓から手を振って挨拶してきたのは、なんと水色のボディをした、喋るクマのぬいぐるみ。天馬は混乱して、言葉を失った。
そのクマは、大監督、クラーク・ワンダバットと名乗った。フェイは彼のことを『ワンダバ』と呼んだ。
そうしてワンダバは先程アルファに変えられた、天馬の歴史も元通りにしておいた、と説明した。歴史は変えられた直後であればあるほど元に戻りやすいと教えられたが、天馬には何が何だかさっぱりだった。
そして天馬は、更なる未知の力を目撃する。
ワンダバは懐から取り出した一対の銃のようなもので、フェイに恐竜のオーラを融合させたのだ。
『ミキシマックス』──恐竜の個性と合体したフェイの姿は、先程よりやや好戦的なものになっていた。
後半戦からはその力を存分に発揮し、前半で奪われていた一点を取り返すことができた。
しかしその直後。突如アルファは「この試合は中止とする」とだけ言い残し、チームのメンバーと共に消えた。
棄権ということで、形式的にはテンマーズの勝利となったが、天馬の頭の中は依然として混乱したままだった。
そんな天馬に、フェイは説明を始める。今一体、何が起こっているのか。
自分たちはサッカーが消される未来を阻止するために二百年後の未来から来た──そう聞いても天馬はにわかには信じられなかったが、先程の試合を目の当たりにしただけに、無下に否定することもできなかった。
今の事態にとって重要となるキーワードは『パラレルワールド』。時間のある地点に変化が起きると、それ以降の世界に違う流れができる。
アルファたちは時を超え、雷門中サッカー部に関わる重要な出来事に影響を与えた。それにより、雷門中サッカー部が初めから存在しなかった世界線が出来上がってしまった。
彼らの目的はサッカー自体を消すこと。それは世界全体の意思決定をする機関『エルドラド』によって決められた。
二百年後の未来では戦争が起こっている。人類の敵は『セカンドステージチルドレン』──優秀なサッカープレイヤーの遺伝子から発生した少年たち。
彼らは人類を下等な存在とみなし、排除しようとしている。故にエルドラドは人類の間違った発展を阻止するため、サッカーそのものを歴史から消すことにした──。
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年11月2日 10時
