355 精神支配の脅威 ページ48
「だがあの光線は俺たちも浴びた。どうして俺たちは無事だったんだ」
剣城が、最大の疑問を口にする。
心が変わってしまったメンバーと、変わらなかったメンバーの違い。ここに残った六人の選手──私も数に入れている──は、なぜ影響を受けていないのか。
「化身は元々、人の心の強さが形となって現れたもの。それが障壁となって光線を跳ね返したんじゃろう」
化身。共通点はそれか。この場にいるのは全員が化身使いだ……ただ一人を除いて。
全員の視線が再び私に集中した。私はみんなの言いたいことを察して口を開く。
「私は化身を使えない。一瞬だけ影響を受けたとはいえ、なんで無事なんだろう。他に何か共通点が……」
みんなは顔を見合わせた。私はその反応に訝しむ。
ややあって、隣にいた神童が真剣な表情でこう言った。
「さっきの試合中……Aの背中に化身らしきオーラが一瞬だけ見えた」
絶句する。何を言われたのか理解できなくて、一瞬頭が真っ白になった。
──私が、化身を?
慌ててみんなの方を見る。天馬たち、フェイ、さらには葵たちまでもが神妙な顔で頷いていた。
記憶を手繰り寄せる。思い当たる場面は一つだけあった。アドレナリンが一気に分泌したみたいな、あの一瞬だ。そういえば視界の端に黒いオーラがちらついていた。にわかには信じがたいが、その光景は全員が目にしたようだった。
しかしこの話題について考えるのは後回しだ。早急の課題は、去ってしまったみんなを元に戻すことなのだから。
「なんで……なんでみんながサッカーを嫌いにならなくちゃいけないんだよ。サッカーは何も悪いことしてないのに!」
天馬が俯いて両拳を握り締める。
サッカーを消すためなら手段を選ばない。そんなプロトコルオメガの卑劣な魂胆がただただ許せなかった。
「博士よお、なんとかみんなを元に戻せんがかのう!」
「ふむ……マインドコントロールは一種の催眠術じゃ。プロトコルオメガを倒せば、それを解く方法が見つかるかもしれん」
私は思わず身体に力を込めていた。
あいつらに勝たなければいけない。それはわかっているのだが、正直いくら努力してもあのレベルに追いつける自信がなかった。
「倒すって、さっきの奴らをか!?」
「じゃが他に方法はない。それに時間が経てば、マインドコントロールを受けた連中は『サッカーが嫌い』という今の事実を受け入れてしまうかもしれん」
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作者名:キメラ | 作成日時:2022年11月2日 10時