18 真っ直ぐなガッツ ページ18
「これより、入部テストを始める」
久遠監督が、テスト受験者の名前を読み上げていく。
松風と西園の他に来たのは三名。だいたい予想はついていたけど、たったこれだけとは。
「君たちには実戦形式でプレーしてもらい、それを元に合格不合格を決める」
「「はい！」」
仮に全員が合格したとしても、選手は十四人……いや、剣城を入れて十五人か。
試合をするには充分な人数だが、それでもセカンドチームがいた頃を思うとどこか頼りない。
──せめて松風と西園に『頑張れ』の一言でも言えれば良かったのだが、結局機会を失ってしまったな。
「気張ってけー、天馬」
ふと、隣からそんな声が聞こえる。空野さんのでも山菜さんのでもない。
私の左横にどかっと腰かけたのは、頭にリボンをつけたロングスカートの女子だった。雷門の女番長で、校内では有名人だ。名前は確か──
「瀬戸さん……？」
「水鳥でいーっつの」
ひらひらと手を振られ、毒気を抜かれた気分になった。
おっかない噂──喧嘩で負け無しとか──をちらほら聞いていたから身構えていたが、実際はフランクな人柄のようだ。
「瀬戸さ──水鳥もマネージャー志望で来たの？」
「マネージャー？ あたしはそんなめんどくさいことしねーよ。天馬のやつを個人的に気に入ってんだ」
フィールドに入る松風たちを眺めながら、飄々と言ってのける。
サッカーをひたすらに愛する、その気概を気に入ったということか。
「頑張ってみんなで合格しよう！」
「うん！」
風に乗って、松風と西園のそんな会話が聞こえてきた。
水鳥の言うことが少しわかる気がする。どこまでもひたむきな姿勢は、どこか無条件に応援したくなるものがあるのだ。
だから──合格してほしい。膝の上でこっそり、祈るように手を組んだ。
開始のホイッスルが鳴る。
メンバーたちが手加減しているとはいえ、最初は順調に攻め上がっているように見えたが。
「どこ蹴ってんだよ！」
「お前のトラップが下手なんだろ！」
「てめー！ 強さ考えろ！」
さすがに初対面同士だと連携を取るのも難しいらしい。それにプレー自体も、お世辞には上手いとは言えなかった。
「大丈夫！ これからこれから！」
そんな中で松風だけが、勢いよく走っている。
ボールを取り損ねた信助に対しても、励ましの声をかけていた。
一方でそんな松風を見つめる神童の顔には──苛立ちが募り始めていて。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
