2 眩しい笑顔 ページ2
「えっと……私は二年のAA。サッカー部マネージャー」
歩きながら簡単に自己紹介をする。二年の、と口にしたら、進級した実感が途端に湧く気がした。
「俺は松風天馬といいます！ 新入生で、サッカー部に入部希望です！」
松風天馬。何故かその響きに聞き覚えがある気がして、はたと足を止める。
前に会ったことがある、気がする。話をしたのはこれが初めてのはずだけど。
サッカー。松風天馬。天パの、天馬？
「どうかしましたか？」
呼び止められて顔を上げる。
いつ、どこで会ったのか思い出したけど──芋づる式に引っ張り出された記憶は、私にとって苦いものだった。
過去のことは一旦置いておくことにして、再び歩き出す。
「いや……なんでもない。えっと、熱心なんだね。こんな朝早くから」
「はい！ 誰よりも早く来て、ビシッと入部を決めておくんです！ もういっぱいです、なんて言われたら困るし」
太陽のような笑顔と、意気揚々とした張りのある声に、私はふと思い至る。
この子は多分、今の少年サッカー界の実情を知らないのだろう、と。
「サッカー好きなんだね」
「はい、大好きです！ 中学になったら絶対サッカー部に入ろうって決めていたんです！」
真っ直ぐな決意に水を指すのはやめておこう。入部したら、否が応でも真実を突きつけられることになるから。
何であれ、早速後輩が増えるのだ。今はそのことを素直に喜ぶことにする。
「わかるよ、その気持ち。私も一年前はそうだったから」
だから今はとりあえず、そう言うだけに留めた。
＊
「ここ」
旧部室から歩くこと数分。現れたのは曲線を基調とした現代風の建物。そのてっぺんに閃くのは稲妻のマーク。
「えっ、部室ってこれが？」
「正確にはサッカー棟」
「サッカー棟……ええっ？！ これ全部サッカー部の建物ってことですか？」
「うん、そう」
驚きに目を見開くその姿を見ていると、一年前の自分を思い出す。
建物まるまる一つがサッカー部室。自分も初めて見た時、それはそれは驚いたものだ。
「あら、Aさん？」
背後から女性の声に呼び止められる。
振り向いてそこにいたのは、サッカー部顧問の音無先生。
「音無先生。おはようございます」
「おはよう。今日は来られないって言ってたのに、どうして？」
「用事が昨日のうちに終わったので」
「そうだったの。で……そちらの彼は？」
先生の視線は松風に向く。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
