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｢きゅ、けつき｣
｢そうそう。吸血鬼。だから人間の血を吸って生きて行くねんな〜｣
目の前の男に吸血鬼です、と言われハイ、そうですか。と納得できるはずがない。
けれど、その状況を呑みこんでしまうのには十分すぎる材料が揃っていたのだ。
何もかも揃っていた。
紫の髪をした彼の口元からは二本の鋭い牙が伸びており、そこからは私のものと思われる血が滴り落ちていた。
ペロリ、と自身の牙から滴り落ちる血を舐め取って、私の顎をクイ、と持ち上げる。
これが俗に言う顎クイ、というやつなのだろうが今この状況でときめける程私の頭もバカではない。
｢吸血鬼は人間の血を吸って生きて行く。だからお前の血はこの後誰かが吸うで。でも、最後にうらさんに血を吸われて終わりや。うらさんがお前の血を最後まで飲み干して、お前は死ぬ｣
｢っえ、｣
｢……けどな、気が変わった。お前を殺さんでここに居させて貰えるように交渉してくるわ｣
｢い、いや！私は帰りたいの！！帰してください！｣
こんな所で一生暮らし続けるぐらいなら死んだ方がマシだ。
けれど、生き続けられることが許されるのならば早くここから生きて出て行きたい。早く言えに帰りたい。
私がそう叫べば、彼の笑顔がスッと消えた。
怖くなって少し狼狽える。
｢……人間の癖に吸血鬼に口出しすんなや、家畜風情が｣
昔、本で読んでことがある。
吸血鬼は人間のことを人間として見ていない。ただの餌、家畜程度にしか捉えられていない
と。
私自身、吸血鬼だとかフランケンシュタインだとか、魔女だとか。
そんな人外がカッコいい、と思う節があったためよくそう言った本を読んでいた。
けれど。
実際目の前にしたらカッコいいなんて感情は沸かないし、ただただ怖い。恐怖ばかりが頭を埋め尽くして行く。
冷酷なまでに細められたアメジストの瞳に私は映っていない。
凍ってしまいそうなまでに冷たい紫髪の吸血鬼の指先が私の両頬を乱雑に掴む。
きっと本当に人間のことを人間として見ていない、そんな瞳にいっそ憐みすら感じてしまった。
人間はこんなにも温かいと言うのに、彼はそれを知らないでいる。
吸血鬼に教えてあげたい。
人間はこんなにも優しいのだと。
｢……チッ、お前、おもんないわ。その手錠も足枷も解くから好きにせぇ｣
私が何も反応しなかったことに腹を立てた吸血鬼が指を鳴らせば、ジャラリと音を鳴らして私の拘束具は手と足から離れてくれた。
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ちょこ - 終わってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！ (2021年6月8日 18時) (
レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます！本当嬉しいです大好きです（；；） (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです！！ (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました！！更新おまちしております！！！ (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…！コメントありがとうございます！更新頑張ります…！ (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鎖座波
| 作者ホームページ：もう既に血が足りない
作成日時：2019年10月19日 15時
