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身体の自由が効かないだけで、自主的に動かせないだけで、他人から動かしてもらうことは出来るようで。
ただただ都合のいいようにしか相手に扱われないただの道具に成り下がってしまっている訳である。
「ん〜!完璧!」
「……何、するの」
「まぁ安心せぇって〜!今すぐ何かするわけちゃうし、お話しよ?」
「私は、貴方と話す事なんて、無い」
怖い。ただ怖いだけの思いが頭を埋め尽くす。
ハロウィンパーティーに参加して、友達とあの人のコスプレクオリティ高いね、だなんて話をして、夜は少し高めのハロウィンイベント用の食事をどこかで食べて。
家に帰ったらお父さんとお母さんが居て。
そうしてそこでコスプレを見せて、どれだけ浮かれたの、だなんて話に花を咲かせて。
きっと、今頃、友達と。
あの人イケメンだね、だなんてはしゃいでいたんだ。
脳から脊髄へ、脊髄から全神経まで。
どこまでもただの「恐怖」が支配して行く。
相手に身体の自由を奪われてしまい、ガチャガチャと手首に、足首に、拘束具を付けられていって。
何も抵抗できず、冷たい地面に身体を横にしておくことしか出来ない。
「ねぇ、甘いの、チョーダイ 」
「っひ、」
耳朶を甘い吐息がなぞり、上ずった声が口から漏れる。
「可愛ええ声出すんやねぇ。なに、キモチイイの?」
「ゃ、」
気持ちいいとか、そんなの分からない。
耳元で喋られる度に、息を吹きかけられる度に、背筋がゾクゾクして勝手に唇の端から吐息が漏れて、鼻にかかるような声が漏れる。
「あ、もう拘束もしたし弛緩剤要らへんか!」
パチン、と指を彼が鳴らせば、ピクリと指を動かせるようになり、そこから身体を動かそうとすれば手足の拘束をされていること以外では自由が効くようになった。
身体を起こそうとするも、後ろ手に拘束されたままなのでどう起こせばいいのか分からない。
「ん、可愛ええ……」
「ゃ、やめ、……」
「気持ち良さそうやん。何でやめなあかんの?」
「っひぅ、」
背筋がビクビクと揺れて、頭の中には彼の声と、彼が耳を舐める音しか聞こえない。
気持ちいいだとかそんな物かどうかなんて分からない。分からなかった。
ただビクビクと勝手に背筋が揺れて、ゾワリと這い寄ってくるナニカに耐えて、口の端から漏れてしまう甘い声を必死に出ないように堪える。
こんな声、私じゃない。
恥ずかしい。
「なぁ、恥ずかしい、とかそんなのええから。俺だけ見とけばええよ」
その声と共に、もう一つの足音が聞こえた。
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ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない
作成日時:2019年10月19日 15時