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「はい、お茶」
コトリと音を立てて置かれたティーカップはやはり貴族が持っている様なアンティーク調のものであった。
甘い香りが鼻腔をくすぐり、その香りに釣られてそのままお茶を喉へと流し込む。
「ん、甘い…」
「マジ?良かった。所でなんでこんな所に来たの?」
「友達と、ハロウィンパーティーに行くはずだったんですけど……地図見ながら来たのに迷ったんですかね…」
「……あ、ハロウィンパーティー?それなら俺らがやろうって言ってたやつなんだよ!ここで合ってる!」
「本当ですか!?所で、私の友人は…?」
何故か私の返答の後の彼の言葉には間があったが、特に理由も無いだろう。
何よりも私の友人が先だ。一人でここに来たのなら連絡のひとつくらい入れてくれればいいのに。
……まぁ、スマホの充電を切らしてはいたのでどちらにしろ連絡は取れなかったが。
「あー、あの子なら別の部屋でパーティーに参加してる。どうせ夜は長いし、ここでお茶飲んでから行けばいいんじゃない?」
「すみません……お言葉に甘えます…」
もう一度コクリとお茶を喉に流す。
お茶というか、なにかの紅茶だろうか。
香りも良ければ、甘みも丁度良い甘みである。
私が紅茶を飲みながらお菓子を食べるのを、目の前の彼は黙ってニコニコと見つめて来る。
その笑顔が普通の笑顔ではなく、少し裏があるような、何かを企んでいるかのような意地の悪い笑みなのは気のせいだろうか。
「あの、私の顔に何か付いて…──」
「あ!そういや、その服何のコスプレ?」
「え、ええっと……パ、パンプキンです!」
「へぇ…美味そ」
へっ?と素っ頓狂な声が出てしまい、それが恥ずかしいので私は黙って紅茶を飲む。
この人、普通にとんでもない発言をしたが平気そうにしている。
いや、もしかしたら聞き間違いかもしれないし、そんな事を言いましたよね?と口にしても何を言ってんだ自意識過剰な女だな、なんて思われても困る。恥ずかしすぎる。
現に、目の前にパンプキンがあるのだから、この事を言ったのかもしれない。早とちりは良くない。
「ねぇ〜めっちゃいい匂いするやん〜!」
扉を開き、大声で言いながら言う男の人が部屋へ入ってくる。
赤髪をピョコピョコと揺らしながら駆けてきた男の人は、緑の彼よりも笑顔が幼く、愛くるしかった。
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ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない
作成日時:2019年10月19日 15時