◇22 ページ22
.
繋がれた手
重岡くんは拒む事なくその手に力を入れた
「自ら死んだなんて考えられへん
テニスの試合応援行く言うてたし、花火大会やって、…行こうなって約束してたんやっ
三年生になったらあの高校に一緒に受験しようなって
お兄のおるあの高校に入るんやって楽しみにしとったアイツがそんな事するわけがないんや」
震えた声
重岡くんの言葉に嘘はない、けど私には先輩がやったとは思えなかった
あの日重岡くんの話を先輩にした時、あの揺らいだ目は動揺の目だったのか、
それとも罪悪感か
「…凄く好きだったんだね、先輩の妹さんの事」
「恋愛感情やないで、けど大切やった、
�霤沈菁擇笋辰董朕鰺気�んやって、…」
「ごめんね、もういいよ、
でもね重岡くん、私先輩が怖くないよ、
先輩がそんな事するはずないもん」
「わかってる、わかってるねん俺やって
…けど、もう行かんといて、お願い、
あの音楽室で二回も大切な人失うん、俺絶対嫌や」
顔を上げた重岡くんが真っ直ぐ私の目をとらえていた
あの音楽室には古くからの嫌な噂があり、それに追い打ちをかけるように先輩の妹さんの事件が起きた
その日から音楽室には授業や部活以外で訪れる人も、近寄る人すら現れなくなり、
そこへ行くのは一人だけ、�霤沈菁擇世韻世辰�
「私が大切？」
「大切や」
「ありがとう、でも私はいなくならないよ」
「殺されるかもしらんで」
「先輩はそんな人じゃないよ」
「…ごめん」
本当は重岡くんも先輩がやったとは思っていない
それでも妹さんが自ら命を絶ったなんて信じたくなくて、
疑わざるを得ない、そういう風に見えた
「ごめん」と呟いて小さくなる重岡くんに首を横に振る
深く呼吸をした彼は悲しげな顔はどこかへやって、歯を見せてニカッと笑った
そんな彼に驚いていれば優しく目を細める
「この話はもうやめようや
せっかくのデートやねん！楽しまなっ！まあ雨やけど」
「…ふふっ、そうだね、やめようか」
「ははっ、今更やけど注文しようやっ
俺のオススメはな〜、これ！このケーキめっちゃ美味いねん！」
いつも通りの重岡くん
この話はなかった事にしようと、だって重岡くんは優しい人だから
だから私も先輩の“噂話”の事は今は忘れて、
目の前にいるキラキラな笑顔の重岡くんとの時間を楽しんだ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1630人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なあちゃむ(プロフ) - コメントの返信ありがとうございました！桜さんの作品は自分の頭の中で映画のように綺麗に想像することができるので本当に素晴らしいです。桜さんの作品、すべて読ませていただきました。どれも素敵で、読み直した作品もあります。これからも更新楽しみに待ってます。 (2016年8月10日 8時) (
レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - なあちゃむさん» 「また明日」っての方でもありがとうございます、とても嬉しいです、読んでくださる方の脳内で映像化されるような情景描写、美しく綺麗な世界になるように心掛けております、なのでお言葉とても嬉しく自信になります！書いてて良かったです、本当にありがとうございます (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 怜奈 桃ジャス民さん» 順調に進んでおられて良かったです、わかりました、応援していますね(^^) (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - 読んでいてその風景を思い浮かべることができました。ストーリーも本当に素晴らしくて、占ツクを読んで泣いたのは春紫苑が初めてです。本当に素敵なお話でした。また読み返します。 (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - コメント失礼致します。初めまして、友達がオススメしているのを聞いて、久しぶりに占ツクにログインして春紫苑を読みました。私が期待していたイメージを遥かに超えて本当に素敵な作品でした。情景描写の美しさ、メンバーのキャラクター、すべてがイメージとぴったりで (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜
| 作成日時：2016年6月21日 1時
