#9ジョンハン ページ9
彼女は大人しく出勤してくれたようで、練習室の隅でじっと俺たちのパフォーマンスを見ていた。
昨日の様子からして、来てくれなさそうだったのに。
「ねえ、ヒョン。あの子めっちゃくちゃ可愛い……！」
休憩していると、そうミンギュが声をかけてきた。
確かにソラは誰もが認めるほどの綺麗な女性だ。
それは数々の美しい女性アイドルたちを見てきた、目の肥えたメンバーたちが見ても、「可愛い」だの「綺麗」だのとコソコソと話すくらい。
「ソラちゃんって恋人いるのかなあ」
「……訊いてみたら？」
「うん。そうする」
「マジか」
まさか本当に行くとは思わず、少し驚いた。
確かに、単独行動が禁止されている今は……女性との出会いが少なくなっている。
だけど、アイドルとしてどうなんだ。
メンバーがいる中で変なことはしないだろうな、と内心ソワソワしつつ、休憩するフリをして2人の会話を盗み聞きすることにした。
「ソラちゃんだよね？ 俺らの護衛してくれるって！」
「ええ」
「アイドルにはならなかったの？ すごく可愛いのに！」
「まあ」
明らかにうざがられてるな。返事も適当過ぎる。
ミンギュのようなイケメンに声をかけられれば、目をハートにする女性は多いはずだけど……ソラはあんまりイケメンに興味ないのか。
「唐突に聞くけどさ、恋人っている？」
「仕事の邪魔をしないでください」
さすがにプライベート過ぎる質問はアウトなのか、冷静にそう言う彼女。
「残念〜」とミンギュはガッカリしていた。撃沈だな。
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
