白昼夢は闇を見せない (ページ15)

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#15ジョンハンページ15

騒動後、俺たちはバンで事務所へと帰った。

あの出来事は1部のスタッフにしか見られていなかったし、被害に遭った女性は、軽い脳震盪ということで話をつけたらしい。

そして、運転するマネージャーの兄さんと、彼女、俺の3人だけの空間には当たり前に会話はなかった。

それについては特に気にせず、スマホを取り出そうとした時。

ふと、窓の外を見ると数人のファンが事務所の前にいた。

その中のひとりの女性は、《キム・ヨンス愛してる》と書かれたボードを持っていた。

「うちの事務所の稼ぎ頭だったんだよな、ヨンスは」

それが目に入ったのか、兄さんはヨンスについて語り始めた。

そういえば、初めて兄さんの口からヨンスについての話を聞いたな……。

「数十年経った今でも、命日になるとああやってファンが来てくれるんだ。未だにシングルも売れてるし、出演したドラマだって再放送されまくってるんだぞ」

「俺、ヨンスのファンだったんだ。ドラマもセリフを覚えるくらい観たよ」

「そうだったな！ヨンスはな〜、性格も良かったんだぞ。オーラもあったし、誰に対しても礼儀正しくて優しかったなあ」

「そうなんだ。見た目と性格が伴ってるって感じ」

「そうそう。本当に惜しい人を亡くしたよ」

本当に残念そうに言う兄さん。

そんなに言うなら、1度でいいから、会ってみたかったな。

俺たちがヨンスについて盛り上がっている外で、ソラは窓の外を見て物悲しそうな目をしていた。