小瀧くんに捧げる不要物

07.ドーナツとボイスレコーダー ページ7

〆．



小瀧くんは、モテる。



それは常々思っていたのだけれど、彼の生態など知る由もない外の世界では特に酷かった。



「あの人イケメン…！」



「隣にいるの彼女だよ、絶対」



「いいなぁー…」



そう。彼は本当にモテるのだ。



裏側を知ってもなお同じことが言えるのかと問いただしてみたい。



「誘っといてなんだけど、小瀧くんって甘いもの大丈夫なの？」



「好き！好き！」



「私のことは？」



「好き！…………あ"っ！？」



今のなし！と喚き始めたので、なしにしとく。



ドーナツをトングでいくつか乗せ、お会計は割引券込みでワンコイン。



私が店員さんに割引券出した時、小瀧くん泣きそうな顔してたなぁ。



私が使った紙ナプキンやウェットティッシュをカバンにしまってても、気付かないふりしてあげるね。



「小瀧くん、あーん」



「！？！？」



また痙攣が起き始めたけれど、気にせず彼の口にドーナツを突っ込む。



「おいし？」



「………んまい」



確かにこう見ると、顔は本当に整ってて美しいんだよね。



中身だね。



一途、の一言で片付けられたら爆モテ必至だったと思うよ。



もぐもぐしてる小瀧くんを、他の女子高生がチラチラ見る。



なんとなく嫌な気分になって、隣に座る小瀧くんとの距離をゼロにしてみた。



「Aちゃん？！」



「ごめんごめん、混んでくるかな〜と思って？」



下手な言い訳も、彼にとっては録音の対象。



ケータイのアプリとかじゃなくて、本当にボイスレコーダー持ってるんだね。



優越感に酔いしれていたのかもしれない。



〆．

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