望くんと彼女。

22-1.豪雨と雷【リク】 ページ34

〆．



「雨男ー」



「ちゃうわ！！」



クラスで、そんな声が飛び交う。



朝から曇天ではあったけれど、大きな雷鳴を皮切りに、ザァザァと雨が降り始めた。



「今日の体育、中だよ！」



「良かったぁ、グラウンドでの持久走ほんと無理だもん」



まだ午前中なのに電気がないと真っ暗。



窓の外を眺めつつ、空が光ってから音が聞こえるまでの秒数を数えていた。



あ、雷は全然平気です。



ノートに視線を映すと、一瞬、見てなくてもわかるくらいにパッと光り、大きな音が教室に響いた。



「きゃー！」



女子達が怖がり始め、男子はワクワクした表情を見せる。



授業中なので、先生が「静かにー！大丈夫やで〜」とみんなをなだめる。



私は一切動揺することなく、板書をさらさら写していく。



………とりあえず一回だけ、振り向いておくか。



斜め後ろからの視線に返事。



望の顔がぱああっと華やぎ、長い腕が横に伸びた。



「………………………！」



キラキラお目目と緩みまくりの頬。表情で、何が言いたいかわかる。



怖いなら俺に抱きついてええよ、むしろ来てください……ってね。



言っとくけど、授業中ですからね。



私はささっと付箋に一言書いて、望の机にぺたりと貼った。



「え、」



【ごめんね、カミナリ平気で】



両手を合わせ、また前に向き直る。



こういう時に怖がれたら可愛いんだろうけどなぁ。



………どうやったら望は可愛いって思ってくれるのかなぁ。



〆．

22-2.豪雨と靴下【リク】→←21.思春期男子とオカズの食べ方【リク】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す