望くんと彼女。

14-5.ストラップと下心《望side》 ページ21

〆．



「Aごめん……」



Aを家に送り届けた。



お義兄さんは「そばにおりたいならおってええで、看病譲ったる」と言い、部屋を出ていった。



もう真夜中やし、そのまま泊まれば？って。ありがとうございます。いろんな意味で。



そうして二人きりになった俺ら。



こんな状況に興奮は抑えられないけれど、ゴミ箱漁りはやめとこう。



…………ほら、持ち帰る袋持ってきてへんから。



あったら貰ってた。当たり前やん。



下心を押し殺しつつも、俺の視線はAと自身の掌をうろうろしていた。



さっき、Aを叩いてしまって。それが悔やまれる。



お義兄さんにもそのことを謝罪すると、「お前がやってへんかったら俺がやってたから、気にすんな。とりあえずAのほっぺたの感想は聞かせてもらうけど」と微笑んでくれた。語った。



柔らかくてもちもちで………



だからこそ余計に、叩くのはやり過ぎたのでは、と思う。



怒鳴るだけでも、Aの心は傷ついたはずやのに。



「…………の、」



「Aっ？」



「……………、」



「寝言か………録音機器持ってへん……」



後悔ばっかり。



きっとAは風邪を引く。



雨に打たれ、体冷やして熱出して倒れてるんやから、必然的な流れや。



A、風邪菌ちょうだいな？



Aを叩いた方の手を使うのはしのびなく、



反対側でそっと髪を撫でた。



枕元にツーショットの写真が置いてあって、にやけとよだれが止まらへん。



今のうちにAの部屋の写真を撮って、原寸大にコピーして俺の部屋の壁紙にすることもできたけど。



Aの唇の型を取って、いつでもAとキスできるアイテム作ることも考えたけど。



とにかく、今は深呼吸をし、Aの部屋の匂いで肺を満たすことだけに専念した。



〆．

15-1.露天風呂と仲直り旅行→←14-4.ストラップと彼からの電話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す