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〆.
気付いた時には、重岡くんの家にいた。
紅茶を出されたけれど、もう生きるのに疲れたからと首を振れば
重岡くんは怒った顔で無理矢理カップを私の口に当てた。
一時の優しさを永遠に繋げるのは難しい。
事情をとっとと説明して帰ろうと、かなり簡略して出来事を説明した。
立ち上がろうとした私を引き留め、その腕に閉じ込めたのは重岡くん。
もがいた私を、子供をあやすかのように優しく抱きしめ続けたのも重岡くん。
「…………髪の毛、切らんかったらよかった」
零れた一言は、ただ震えていた。
「どうして?」
「やって、髪の毛切ったからAはもう来おへんし、髪の毛切ったからお母さんにそっくりになって、それで、」
重岡くんが自分を責める必要なんてどこにもないのに。
「ふふ、違うよ。そんなことない。私は最期に、重岡くんに髪を切ってもらえて幸せだった」
「最期って言うなや、」
「それに、失恋もしたし」
「失恋……」
「知ってる?私、重岡くんのこと好きだったんだよ」
一瞬緩まる腕の力。
その隙に逃げ出そうとした私を、重岡くんは決して逃そうとはしなかった。
「何それ。知らんかった。Aも俺がAのこと好きやって知らんかったやろ?一緒や」
「は、」
胸が詰まった。
幸せすぎて、理解したくなかった。
嬉しすぎて、信じたくなかった。
ガーゼや絆創膏だらけの顔にはまだ傷があったらしく、
涙が染みて痛んだ。
〆.
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作者名:はゆな | 作成日時:2020年4月8日 21時