第6章 花火の匂い。 ページ6
外が暗くなってから、僕たちは花火をしても大丈夫な
公園へ出かけた。
「私、手持ち花火するの小学生以来だよ」
「そうなんだ、楽しみだね」
「うんっ、線香花火が先に落ちた方が負けとかよくやったなぁ」
小学生以来か…
3年前に一度、友達たちと複数人で
手持ち花火をした日
その中には、1番の笑顔で楽しんでいた奈々の姿が過ぎる。
サンダルの隙間から通る風が、夏を感じさせる。
「夜は涼しいね」
「うんっ、凛くん風邪ひかないよう気をつけないとね」
「うん」
しばらく歩くと
砂利で埋め尽くされた広場のような場所に着いた。
水飲み場に行き、バケツにたっぷり水汲んだ。
「奈々、花火出して」
「えっと…はい！」
ポケットからライターを出して
「奈々どれにする？」
「私は線香花火！」
奈々が手に取った花火に火を付けた。
ぱちぱちと火が散る音が懐かしい思い出を蘇らせる。
＿＿＿＿＿＿＿
「凛くん〜！」
「どうしたの？深澤さん」
「凛くんも花火するよ！」
「僕は…そんなに」
「花火するの提案してくれたの、実は凛くんでしょ？」
「何で分かるの？」
「何となくだよっ…凛くん優しいからね！」
「僕は、優しくないよ…」
「自分じゃ分からないものだって！捻くれてるなぁ」
「否定できない……」
「凛くん、隣に座ってもいい？」
「いいけど…」
「寒くない？凛くん大丈夫？」
「寒いなら、カーディガン貸すよ」
「ありがとう、無意識に優しいね」
「えっ？」
「そういうところ、すっごい好き」
「そっか、僕も深澤さんとは話しやすい」
「今の……意味伝わった？」
「好きって？僕もだよ」
「違うよ、そうじゃなくて…///！」
「……？」
「凛くんのことが好き」
＿＿＿＿＿＿＿＿
今日は夏の夜で、あの日のことをよく思い出す。
「凛くん？花火しないの？？」
「花火なんて、やったの中学生以来だなぁ」
「そうなんだぁ、楽しいよ」
僕の好きな奈々はこんなだったか？
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作者名：そら | 作成日時：2021年1月14日 21時
