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そうしてピアノを弾くこと約三十分。
「恩田さん、終わったよ」
社長の声に私は手を止めた。
ちょうど曲が終わるところ、もしかしたら声を掛けるタイミングを待っててくれたのかもしれない。
「お疲れ様」
「社長もお疲れさまでした」
「すぐ帰る？」
「いえ、ちょっと休憩してから帰ろうと思って。ケーキ食べます」
「それなら、俺もなんか飲んで帰ろうかな」
そう言う社長と一緒にキッチンへ入る。
私もコーヒーでも飲もうかなと思いながら引き出しを開けると、目の前にあるココアの袋に気が付いた。
「あ、ココア」
「ココア？あぁ、そう言えばこないだ二宮が買ってたな。CMやってるタレントが俺に似てるとかなんとか」
「あー、似てますね」
私はココアの袋を手に取った。
溶かすだけのパウダータイプ。
「昔よく作ったんです。これでシナモンと蜂蜜を入れたココア」
「シナモンと蜂蜜？」
「はい。甘ったるいですけど、シナモンの香りが美味しいんですよ。たまに夜中に飲みたいって言われてそれで、……あ、いえ……なんでもないです」
口が滑りかけて私は慌てて誤魔化す。
でも社長は難しい顔で私を見下ろしていた。
「よく作ったの？誰かに」
「……はい。同居人に、たまに」
誤魔化すのもおかしいかなと思って私は素直に答えた。
社長は「そう」なんて静かに呟く。
詳しく聞いてこないのは社長が大人だからだ。
「じゃあ、俺にもそれ作ってもらおうかな」
「え？」
「君が作るココア、興味ある」
にこりと笑って社長が言う。
私は社長の顔を見たまま一瞬フリーズして、それからゆるりと頬を緩める。
強張りかけた顔が柔らかくなった。
「わかりました。すぐに」
「ケーキってまだ残ってるんだっけ」
「ありますよ、あと二つ」
「じゃあ俺も食べようかな」
「ぜひぜひ。美味しかったですよ」
思いがけずに社長とティーターム……ココアタイム？だ。
夜も遅い時間だけど。
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やっち(プロフ) - 続き待ってます❗ (2021年11月9日 5時) (
レス) @page18 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月20日 21時
