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残暑がようやく弱まり始め、それでもまだ夏服が仕舞えない十月の頭。
社長の元でピアニストとして働き始めて気が付けば一か月半ほどが経っていた。
「ケーキですか？」
「そう。今日来た取引先の人にもらったんだ。なんか、有名店のやつみたいで。俺あんまり食べないから恩田さんにあげるよ」
「でも、社長がいただいたものですよね」
「うちにくれたんだからどうしようと俺の勝手でしょ。気にしないで食べていいよ。冷蔵庫に入ってるし、できれば持って帰って欲しい。賞味期限もあるし」
「わかりました、そういうことなら」
お昼過ぎに出勤した私は着くなり社長にそう言われてキッチンの冷蔵庫を確認しに行った。
冷蔵庫を開けると社長の言うように箱に入ったケーキの箱がひとつ真ん中に鎮座している。
中を開けてみると、宝石のようなケーキがいくつか収められていた。
「わっ、これ超有名店ですよ」
シールに書かれていたお店の名前を見て私は声を上げる。
遠くから社長の「そうなの？」と聞き返す声が聞こえてきた。
「いいんですかホントに、これ私がもらってしまって」
私はキッチンから社長室に顔を出して問いかける。
社長はもう一度「いいって言ってるでしょ」なんて返事をした。
「では、ありがたくいただきます」
女の子はみんな甘いものが好きだ……というのは幻想だけど、少なくとも私は大部分の女子と同じように甘いものは好きだ。
仕事柄身体のラインが出るドレスを着る機会が多いのであんまり食べないようにはしてるんだけど。
でも、私でも知ってるほどの有名店のケーキ。
さすがにこれは逃がせない。
「あとで休憩の時にいただきますね」
「うん、そうして。向こうにお礼のメールも入れておかないといけないから」
「責任重大ですね」
「情緒たっぷりに感想を語ってくれたらそれをそのまま送るよ」
「それは止めてください」
「あはは」
社長は真面目な顔で反論した私を見て笑う。
こういう冗談を交わすのは楽しくて結構好きだ。
私はケーキを冷蔵庫に仕舞ってピアノに向かう。
今日も仕事頑張れるなぁと単純なことを考えながら、鍵盤を押し込んだ。
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やっち(プロフ) - 続き待ってます❗ (2021年11月9日 5時) (
レス) @page18 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月20日 21時
