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「しごと……」
「はい。うちの社長がどうしても生演奏のピアノを社長室に置きたいとわがままを言ってまして。ぜひ貴女にお願いしようと思っているんです」
淡々と彼、二宮さんは言う。
私は何を言われたのか噛み砕くように口の中で言葉を繰り返す。
「社長室でピアノ……」
「あ、そうか、自己紹介がまだでしたね」
そう言うと二宮さんはつかつかと私に歩み寄った。
「俺はこういうものです」
笑顔で差し出された名刺を恐る恐る受け取る。
そこには、驚きの企業名が書かれていた。
「総合楽器櫻井カンパニー……え、SAKURAI？」
「ご存じですか？音楽業界の片隅にある会社なんですが」
謙遜なのか嫌味なのかわからない台詞を言う二宮さんの顔を見上げる。
片隅なんてとんでもない。
総合楽器櫻井と言えば音楽業界のど真ん中を行く総合音楽商社だ。
何を隠そううちのピアノもSAKURAIのものである。
亜由ちゃんが音楽業界の片隅で秘書をやっている、なんて言っていたけど、とんでもない。
こんなさびれたジャズバーに来るような人ではない。
「……」
私は名刺を見つめて沈黙する。
すぐに断ればいい。
私の居場所はこの店なんだから。
そう思う自分もいるけど。
一方で呼びかけられた名前が引っかかっている自分がいる。
「どうして……」
悩みながらも、私は聞くことを選んでみた。
「どうして私を大野Aと呼んだんですか」
「そうですね……」
二宮さんは驚くこともなく呟くと言葉を探す様に目を伏せる。
「ピアノの音で分かりましたと言ったら信じてくれますか」
食えない人だ。
二宮さんは薄く笑顔を浮かべてそう言った。
聞いても無駄だと理解する。
確かに聞けばわかるかもしれないけど。
それはこの店に聞きに来なければどうしようもない。
そんな確率がどれくらいあるだろう。
世界とは自分が思っているよりも広いものだ。
「……そうですか」
悩みながら私はそう呟いた。
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iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
