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食事を終えると、ピアノに戻ろうとした私を社長が呼び止めた。



「あ、恩田さん」

「?はい」

「もう遅いから帰っていいよ」

「え、でも……」



本来の終業時刻は五時だ。

だから、確かにとうに時間は過ぎているんだけど。



「まだ大丈夫ですよ?」

「そうは言っても、明日も仕事あるんですよね」



社長の言うように明日は出勤日。

HISORIに行く予定がある。

でも……。

私は社長のデスクに目を向ける。

まだ途中らしい仕事が雑多に散らばっていた。

あれをこれからまだこなす社長を置いて先に帰るのは気が引ける。



「平気です。どうせ出勤は夜からですから」

「そうは言っても、もう遅いですし……」



渋る社長に私は出来るだけ自然に笑みを向ける。



「ギブアンドテイク、ですよ。この間食事もごちそうになってますし。気にしないでください」



私がそう言うと社長は「う」と言葉に詰まって、やがて諦めたように手を合わせた。



「……じゃあ、お言葉に甘えても?」

「もちろん。これで社長が仕事しやすいならお安い御用ですよ」

「そっか」



私の言葉に社長がはにかむような表情をした。



「お給料上がるかもしれませんし」

「え、そこですか?」

「ふふ、ギブアンドテイクですからね。なので、遠慮なく」

「それは確かに遠慮要りませんね」



顔を見合わせて笑い合う。

二宮さんの咳払いが聞こえた。

社長のところで仕事を始めて二週間と少し。

冗談も交わせるようになってきた。

一日同じ空間にいるだけあって社長と言葉を交わす回数も多いし、自然と距離は縮められたようだ。

このくらいの距離感だと仕事がしやすくていい。



「お二人とも、そろそろ仕事に戻られては」

「はいはい」

「そうですね」



私はピアノに戻る。

社長がちょっとでも気分が良くなればいいなと思って、相葉氏の楽曲を選んで演奏することにした。




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iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです!お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね! (2021年9月8日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:iCHiKA | 作成日時:2021年9月4日 16時

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