――19 ページ31
.
「おはようございまーす」
「Aー！」
「わっ、亜由ちゃん？」
翌日の夜。
お店に出勤するなる人影にとびかかられて私はよろける。
飛びついてきた張本人、亜由ちゃんは頬を私にすり寄せた。
「大丈夫だった？若社長とやらに手出されたりしてない？」
「ちょ、亜由ちゃん髪刺さってるから！」
「あたしのAに手出したら許さないからな櫻井ー！」
「わあっ」
亜由ちゃんがぎゅむっと私を抱きしめる。
私より亜由ちゃんの方が背が高いから私の顔は亜由ちゃんの肩口に押し付けられている。
「おい、そのままだとAが窒息するぞ」
「あ、ごめんA大丈夫？」
松本くんの声がしてようやく身体が解放される。
大きく息を吸うと手のひらを合わせて謝罪のポーズをしている亜由ちゃんと目が合った。
「もう、急に抱き着いてこないで」
「ごめんごめん、心配でつい」
つい、で窒息しそうになってたらたまったものじゃない。
バーカウンターでグラスを磨いている松本くんだけが悠々と私たちを笑っている。
「松本くん？」
「悪い、俺も心配してたよ」
「だから笑ってるじゃんって」
口元ににやにやとした笑みを浮かべている松本くんに文句を吐き出す。
松本くんは「ふっ」と鼻で笑うだけだったけど。
「それよりA、マジで大丈夫なの？変な仕事させられたりしてない？」
「大丈夫だよ亜由ちゃん。心配しなくてもいい人だし、優しいし、変なことなんてないって」
私の腰に手を伸ばそうとしていた亜由ちゃんを身体を捻ってよけながら私は言い返す。
これは社長の名誉のためだ。
「仕事大変じゃないのか」
「うん。最高級ピアノ弾けるのは楽しい」
「そっか」
松本くんの言葉にそう返せば彼はどこか安心したように微笑んだ。
意外と心配してくれてたのかな、同僚のよしみというやつだろうか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
