――13 ページ25
.
荷物を置いて、私は早速ピアノに向かう。
「それで、どのように弾けばいいでしょうか」
「ああ、そうですね……リクエストがある方が弾きやすいですよね」
「出来れば」
私の言葉に櫻井社長は立ち上がると壁に備え付けられた棚を見始める。
そういえば、ここには様々な楽譜やCD、レコードなどが並んでいるようだ。
私も近づいて眺めてみる。
すごい、コレクションになってるんだ、色々あるな……。
「じゃあ、これでお願いします」
櫻井社長は棚から一冊の楽譜を取り出すと私に差し出した。
受け取って表紙を確認する。
「相葉雅紀全集一……相葉雅紀氏の楽譜ですか」
「そう。相葉さんのサックスの大ファンなんだけど、これは少し前に発売されたピアノアレンジバージョンで」
「知ってます」
というか、持っている。
買うつもりはなかったんだけど、本屋で見つけてつい買ってしまったのだ。
「あ、そうなんですか？」
私の言葉に櫻井社長は嬉しそうな顔をしたように見えた。
「俺、貴女と相葉さんの音色って似ている気がするんですよね。楽器違うのに。おかしいですよね」
櫻井社長がそう言って笑う。
私はまじまじと櫻井社長の顔を見てしまった。
「あれ、おかしすぎました？」
櫻井社長が不安そうに眉を下げるのを見て慌てて首を振る。
「いえ、違います。私も似てると思ってるので、分かるなんてすごいなぁと思いまして」
取り繕うように言ったけど櫻井社長は気にしないのか笑顔に戻ってくれた。
「そうですか？」
櫻井社長は棚に手を伸ばすとCDを二枚引き出す。
「仕事上付き合いがあってね。いつもCDにサイン入れて送ってくれるんだけど、一ファンとして自分でもCDを買うようにしてるんです」
櫻井社長が見せてくれたのは相葉氏の古いCDだった。
片方にはサインが入っている。
同じものだ。
「そうなんですか」
「この間聞いた時から思ってたんだ。貴女の音は彼に似てるって」
櫻井社長は大切なものを見るように相葉氏のCDを見つめていた。
私は感心したような心地でその横顔を見る。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
